日常㉙
朝からクラス担任の辻ちゃんが騒がしくしてくれた所為で、3限目はひとみの所に逃げ込むことに成功して生気を蓄えていた。
いや、そうでもしないと身体もとい精神が持たないのでひとみの癒しが必要となり、少しでもいいから顔を見れたり、軽く抱きしめてもらえるだけでも十分。
ひとみに癒してもらったおかげで、4限目も睡魔が襲ってくる所をなんとか耐え抜いたが、チャイムなった瞬間に松木置き去りにして1人で生徒会室に向かった。
正しくは、誰にも捕まりたくないから全速力で生徒会室まで逃げただけのこと。
鍵は、ひとみ・秀子・かおりの誰かが所持をしてるので当然、俺が着いた時に鍵が掛かってることはないので、ドアを開けるとほぼ揃っていた。
「あれ、先輩?松木先輩は?」
「ああ、捕まりたくないから全速力で置いてきた」
「今回はそれが正解でしょうね。最悪、松木先輩が捕まるだけの話ですね」
「そうだな、今の内に手を合わせておくか」
手を合わせようとした瞬間、ドアが勢いよく開いてそこにいた人物とは……
「はぁはぁ、志村……よくも人柱にして逃げてくれたな」
「お、思ったよりも早かったな。よし、揃ったから食べようぜ」
「お前、俺に対する罪悪感はないのか?」
すまんな、今の俺には放課後のことがあるので余計なことに気を向かせたくないのが本音で、俺が窓口になれないのであれば他の奴が一時的になればいいだけで、その相手が松木だったわけだ。
っていうかさ……俺が3限目に逃げたの分かってるよな?
頼むから、4限目の終了後に俺がどうゆう行動するか予測してくれよ。
「ない訳じゃないけどな、お前に来ても言うだけ言って去ると思ってるから」
「まぁ、実際そうだったな。ついでにこれを渡してくれってさ」
「お前からのラブレターなんて、貰って困るもの世界第一位じゃねかよ!」
「な訳ないだろうが!」
うーん、やっぱり松木弄りは俺のストレス?発散になるから卒業するまで止められないなこれは……卒業しても変わらない気がしてきたのは奴の運命なのかもな。
そんな、毎度のコントをしてると。
「ほーら、早く食べちゃいましょうよ」
「悪い、秀子。それじゃ」
『いただきますー』
これもまた、変わったことで生徒会室で食べる時は揃って言うのが定番と化しつつあるのだが、これ自体も強制したわけではなくて自然とこの形になっていたのだ。
ここで思うのは、なんでこんなに器量がいい人間がこの学校にいるんだろうって思ってしまうのだが、無駄な思いだと思い食べることに集中した。
「ねぇ、ひとみー。これ頂戴」
「はい、どうぞ」
「ありがとう、これってひとみが全部作ってるの?」
「ううん、一部が手作りであとはレンジで温めてるだけよ」
「出し巻きは手作りなんだよね。今度作り方教えてよ」
「ええ。お義母さんから直接教わったから」
「おばさまの直伝だったのね」
女子は、お互いの弁当のおかずを交換したり、レシピなどの交渉など女子力アップを図ってる中、俺らはのんびりと食べながら談笑をしていた。
「そういえば、松木から貰った紙にはなんて書いてあったんだ?」
「大体が完走時間の延長だな。あとは、出ただけで参加したいとか」
「無茶な要求をしてくるな。これだけでも最大級の恩恵だって言うのに」
「こうやって書いてくれれば別に俺として構わないんだけどな、叶えられるか未知数だけど」
「こんな勝手な行為に対してキレたりしないのか?」
キレるか……今までが酷いもので誰かにキレたりしたのがあったのかってくらいに記憶にない。
キレたとしても、その後に残るものなんて後悔しかないのは、理解してるからキレないようにしてるのもあるのかも知れないけど。
「今の所は、キレる要素は無いと思う。まぁ、巻き込んだのは事実だからそれくらいは受ける覚悟だよ」
「本当に奥様の力は偉大だな。一つ聞いていいか?」
「なんだ?」
「そのシュシュだっけ?つけててどんな気分なんだ?」
「好きな人と同じ物を付けられるって幸せだなって言うのが本音。別に見ず知らずの人に笑われても気にしない」
「そうか。ありがとう、参考になったよ」
洋太が、そんなことを聞いてくるってことは多分だが秀子からおねだりでも来たんだろうな……そうでなければ俺に聞いてくることもないはずだから。
でも、親友が聞いてくれているのだから、俺はその質問に対して真摯に答えるのが義務だと思い、口を開いた。
「洋太、もし秀子が付けて欲しいって言ったら1回でもいいから付けてみたらどうだ?」
「でも、あいつボブカットで結ぶところがないぞ?」
「女子の中では、シュシュは俺みたいに手首に付けてるのがいるからお互いに手首に付けるのもアリだと思うぞ」
「分かったよ、もし言われたら1回は付けてみるよ」
洋太は、俺の言葉を信用してるようで真っ向から否定することは無かった。
すると、女子連中はご飯を食べ終えたようで俺らの所へ向かってきた。
「あれ、まだ終わってなかったんですね」
「ああ、ちょっと談笑してたら箸が止まってな。どうした?」
「少しでいいから打とうかなって思って」
「秀子、今すぐ食べるから待っててくれるか?」
「ありがとう、洋太」
早く打ちたいのか、食べ終えた洋太は『悪い、打ってくる』って卓の方へ松木と共に向かっていき、俺の隣にはひとみがいてくれた。
「なんか、楽しそうな話をしてたみたいだけど何を話してたの?」
「シュシュのことを聞かれた。だから、秀子がおねだりして来たら試しに付けてみろって助言だけしたんだ」
「そうだったんだ。同じ物が増えると安心感も増すのかな」
「多分そうだと思うよ。ひとみ、もっと俺の所に来て」
「はい♪」
ひとみが寄り添ってくれたところで俺は、カメラのシャッターを切った。
「もう、いつも急に撮るんだから……意地悪」
「現像された時には、最後に言った言葉を訂正しないといけないかもしれないぞ」
「知ってるもん、だから意地悪って言ったの」
なんだ、最初からバレバレですか……そうだよね、この子を欺けるならとっくに出来てるもんね……意地悪はどっちなんだかね、全く。
結局、俺とひとみは打ってる4人を見ながらお互いに寄り添って2人の時間をしっかりと堪能していて、みんなはチャイムが鳴るまでは俺らを気遣って自分達で色々やっていた。
分らない所を松木や美優に聞いたり、1人でも多く打てるように一回毎に変わったりしてるのを見ると、早く作ってあげたい気持ちに駆られるが急いでも良い物は作れないので、今は我慢の時だと悟った。
その時、白い物体がパソコンに向かって行ったのが気になっていたのだった。
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