あの日の再現?

 土曜日である今日は、ひとみの家に泊まりに行くという形になっていて、俺らはひとみの家に向かって歩いていた。


 途中、ひとみからまだ俺の知らぬ本心を聞いた俺は改めてひとみに愛されていると知り、ひとみは更にとんでもないお願いを要求してきたのだ。


 本来、言うなら俺から言うような言葉をひとみが発したことについては嫌悪感とかそうゆうのはないが、発想自体が浮かばなかったのだから。


 あの頃の俺は、ひとみが俺の彼女として隣にいてくれればよかっただけで求めたのは『心』であって『身体』ではないのだから。


 そんなことを言われてしまってどう答えようか迷っていると。


「あくまでの話で家に帰って、あなたが私にしたいことをしてくれればいいから」

「分かった、ただ正直言うとあの時のそのシチュエーションはないかな」

「知ってるっていうか、あの頃のあなたの目はあいつや他の人と違うのが感じていたから」

「そうなのか?」

「うん、私だけの感覚かも知れないけど普通な私に目線を向けるのは『あの対象』なんだって思ってたから」


 その感覚についてはさすがに俺が口を出せる問題ではないが、一つだけ不快な部分があった。


 なので、軽くひとみの頭部に手刀をお見舞いすると……『にゃ!』と可愛い声が出た。


「む~、私なんも変な事言ってないよ?」

「『普通』って言った」

「だって、本当の事だもん。可愛い子や綺麗な子ならそう見られても仕方ないって思うけど、容姿が普通なのは事実だもん」

「全く、それを感じるってことはひとみは既に普通じゃない。もう、視線を食らうってことは『女』として見られているだよ」

「え?」


 あのな~、いくら男が童貞を捨てたいと言ってもそんな簡単に捨てられるもんじゃないんだよ……奥様。


 帰ったら少しだけ説明が必要な感じだなこれは……最近は、俺がポンコツだったから奥様のポンコツは久しぶり。


「この話は家に帰ってからでいいか?聞かれるとお互いに恥ずかしいと思う」

「あなたがそう言うってことは私が赤面するのが確実ってこと?」

「それもあるけど、聞いた後のひとみの顔を俺以外に見せたくないだけ」

「不意に来る独占欲にいつになったら慣れるんだろう……本当にずるい」


 ずるいとか言ってるけど、不意に軍事戦力を当たり前のように使用してくるのはどちら様なんでしょうかね?


 俺の方がまだ子供だましのようなもんだと思うぞ。


 ほ・ん・と・う・に!


 その後はバイトの事で話が持ち切りになっていて。


「師走でこんなに忙しいってことは年末はどうなるんだろうなここ」

「年末にはレジデビューしたりしてね♪」

「冗談で済まなそうだから言うのはやめてくれ」


 そんなことを言ってるが、森川さんの策略で俺はレジに普通に立つことが多くなるとは思いもしなかった。


 それは、後に語られるだろう……経験は大事だと。


 会話が弾むと、歩く距離なんて気にしないのでいつの間には家の近くに着いて、コンビニで飲み物だけ買ってひとみの家に帰ってきた。


「「ただいまー」」

「おかえりなさい、ご飯は食べてきたのよね?」

「うん、言ってあったよね?」

「一応、聞いただけよ」


 なんか、うちと似てきたなーって思っているとドタバタと足音を立てて俺の膝元に突っ込んで来たのは当然……


「かずひこおにーちゃん、おかえり」

「かっちゃん、ただいま。なんか機嫌いいみたいだけどどうしたの?」

「あのね、きょうおにーちゃんがいっしょにあそんでくれたの」

「「え?」」


 かっちゃんの衝撃的?事実に俺とひとみは素っ慳貪な声が出てしまった。


「そうね『仕事まで時間があるから』って言って遊んでくれたのよね」

「うん、かずひこおにーちゃんありがとう」


 お礼を言われる理由が全く分からないから、返せる言葉は。


「なんで?」

「おにーちゃんとあそぶことができたから」

「そっか、お礼はありがたく受け取るよ」

「だから、きょうはおねえちゃんといっしょにいてあげて」

「ありがとう」


 かっちゃんの気遣いを無駄にするのは申し訳ないから、俺らは素直に2階に上がりひとみの部屋で落ち着くことにした。


 ベッドに座ってしまうと、大変なことになりそうなので一旦床に座って俺はひとみを抱き込む形になった。


 いつもの俺らである。


「あなたの存在が色々な人を変えていくね」


 ひとみが不意にそんなことを言い、俺は素直に本音を言う。


「別に変えたつもりは一切ないよ。亨くんのことだって、お互いに話して理解をしただけでの話でかっちゃんと遊んだのだって、亨くん本人の意思なんだから」

「なんで、そんなことをさらって言えるのか今でも不思議だよ~」

「なんでって言われてもな……前に虐められていたのは知ってるのよね?」


 ひとみは『うん』と頷いたが、良い顔はしてない。


「これは俺の見解なんだけど『いじめ』ってある意味喧嘩のように思えるんだ。実際は喧嘩なんだけどな」

「『いじめ』が『喧嘩』?どうしてそう思うの?」

「そうだな、俺らの喧嘩を出来るだけしないスタイルの一つでもある『相互理解』が関係してくると思うんだけど、お互いの理解が出来ていないのが問題なんだ」

「……なんとなく分かったような気がするけど答えた方がいい?」

「いいや、これは議論すべきことではないけど未来の為にはいつかは必要かな」

「未来?」


 奥様?俺らの未来はほぼ確定していて、全てが問題なくなった時に成しえることが出来るのはなんでしたっけ?


 しかも、俺よりも望んでいるのに……いや、俺の方が強いのかな?


「ひとみ、俺がまだ手に入れてないのがあるのはなんだっけ?さっきの言葉を足し算してみて」

「さっきの言葉……えっと、未来、手に入れてない……あ!」

「そうゆうことだよ、これは俺らの未来の為には必要な事であるんだ」

「ごめん、一番大事な事なのに……」

「今の話からそれに持って行った俺も悪いから気にしないで欲しいな」

「全く、あなたは」

「さて、そろそろ化けの皮が剝がれるけどいいか?」


 正直、俺の理性は限界を迎えていてまだ着替えていなかったのでYシャツから覗かせる双丘に、色白な太腿が俺の誘惑してくるのだ。


 実際は、誘惑してるのではなくて俺の目がそこに行ってしまう。


「ずっと、我慢してたもんね♪いいよ、あなたの好きなようにして欲しい」

「その言葉、あまり多用しないようにな。俺らは一応高校生なんだから」

「一応?」

「まぁ、他の人達からしたらそう見られないようだから。それに触りまでならある程度はいいとしても、最後までするのは後々大変になるから」

「私は、気にしてないよ?だって、ちゃんとあれも買ってくれているし」

「そう言ってくれるのはありがたいんだけどな」


 こう言ってるのはひとみの為というよりも俺の個人的な問題であって出来るのなら、毎日だってしたいって思ってるが高校生の範疇に収まっているのかっていう問題なのだ。


 胸や太ももまではならたわむれということで済むし、あの部分に関しても少しくらいなら高校としても問題無いと思っている。


 だが、最後までするということはある意味責任問題でもある。


 あれをつけているから100%大丈夫っていう保証はなく、あくまで確立を下げるだけの物であり、まだ未成年である俺らが欲望のままに動くのも何か違う気がした。


 だから、俺は素直にひとみにこんな提案を出してみた。


「ひとみ、俺は当然だけど出来るなら毎日だってひとみを抱きたい。だから、一つ俺から提案をあるんだけどいいか?」

「いいよ、それでいい♪その代わり、ちゃんと甘えてもらうし触るのはしてくれるんだよね?言いたいことなんてバレバレだよ、旦那様♡」

「なら、言わなくてもいいかって言うのは嫌だから言うけどな。するのは金土のどちらかで、しない時は精一杯甘えること。って理解してるよな?」

「あ、ちょっとだけ違った♪」

「何が違った?」

「『する』のは最大で週2回って言うのかと思ったの。それを追加項目に加えたらダメなの?」


 身体を寄せながら上目づかいで甘い声を出されてどう断れと言うのかな?


 好き、いや愛してる女性にそんな仕草フルコースを振舞われて断れる男子がいるなら、是非ともその秘訣を教えていただきたいくらいであるが、残念ながらそんな男性は存在しないよな……何故か?


 答えは簡単、その男子は彼女に愛情が無いからだって胸を張って言える。


 俺は親友の言葉で気づいたことがあったからその事については俺は否定をしたくなかったのだ。


「いいよ、けどひとみの口から言わせる気は無いから」

「私だって、言いたいよ。お願いだから私が欲しい時は言わせて」

「……分かった、言っていいのは1回だけな」

「意地悪な旦那様♪いいもん、その内私から言わないといけないようにするから」


 ……なんか、よく分からない宣戦布告をされましたが……結構大胆な。


 ちょっと待てよ?


 今の言い方を少しだけ紐解いてみようか。


 つまり、ひとみが自ら『したい』ということを口に出すということだが、それをさせてはいけない気がしてきた。


 それは、俺を完膚なきまでに壊すという意味にもつながるのではないかと……そうなれば俺の理性は完全崩壊を起こす。


 結果、ひとみを貪る野獣に成り下がるということに繋がり兼ねないと……でも、そうなりそうで怖い。


 まぁ、その時はその時で奥様をある意味堪能できるから良しとするかな。


 そんな野蛮なことを考えながらひとみを俺の欲望で埋めることにしたのだった。

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