昨日の続き?

 色々ありながらも、ようやく家に辿り着いたような感じがしつつも早く休みたい気持ちが強かったので、俺らはささっと家の中に入った。


「「ただいまー」」

『おかえりー』


 うちは、玄関からリビングまでは階段を上っていくので玄関から声を掛けても気づかないか、やまびこのような状態になるのだ。


 なので、この家の場合は入った時と直接顔見ていう時で2回『ただいま』が必要となるのだ。


「ただいま」

「おかえり、ひーちゃんがいるってことは静子さんから了承をもらえたのね」

「はい、なので出来ることがあればいくらでも言って下さい」

「ええ、でもちゃんと話し合ってからね」

「はい。今回は心配をおかけしてすいませんでした」

「明日もバイトなんだから、2人ともお風呂入ってゆっくりしなさい」


 母さんは、俺のことは敢えて追及をしてこなかった。


 そして、俺は1つ違和感というかいつもいるはずの親父がいないことに気が付いた。


「なぁ、親父は?もしかして飲み会か?」

「なんか、珍しく仕事が終わらないんですって。車無かったでしょ?」

「親父の事だから、そのまま運転して帰ってきそうだから」

「前に比べて罰が厳しくなったからそうもいかないわよ」

「なら、いいけど」


 この時点で、俺は親父のスーツがあることに気づいていなかった。


 それは、もうこの時点で親父は既に帰宅しており出掛けているということなのだが、物心がついた時で夜に親父が出掛けることはほぼないのだ。


 全てを隠されているので分かるはずもないのだが、俺とひとみの共通の知り合いが全員グルなんて思う訳ないのだから。


 このある毎に、あの2人がここに来てるなんて思わないから。


「じゃ、なにかあったら言ってくれ」

「今日は大丈夫だと思うわよ」

「そう願いたいかな。ひとみお風呂はどうする?」

「先に入らせてもらってもいい?」

「ああ」


 ひとみが帰ってきたのが察知したのか、妹がイノシシの如くすっ飛んできた。


「おかえりー。お姉ちゃん」

「ただいま、瞳」

「昨日、散々独り占めしたんだから今日はお兄ちゃんに譲りなさいよ」

「えー」

「瞳、今日は私が一彦と一緒にいたから我慢できる?」

「お姉ちゃんにそう言われたら諦めるけど、その代わりお風呂一緒に入って」

「それなら喜んで♪」


 2人は、そのままお風呂場に向かい俺は母さんと2人きりになった。


「母さん、何から何まで手間を掛けてごめん」


 裏で手を貸してくれた母さんに感謝と謝罪を込めて頭を下げると。


「本当はする気無かったけど大丈夫かどうか分からなかったからね」

「もう大丈夫、ちゃんと自分のすべきことが理解できたから」

「あんたは人からの厚意をもっと受け取るべきよ」

「今後はそうするよ。ありがとう、母さん」

「親として当たり前のことをしてるだけよ。それよりもひーちゃんの服って」

「誕生日の時に俺がいいなって思ってプレゼントしたのを着てくれたんだ」

「あんた、人を着飾るセンスなんかあったのね。自分のは壊滅的なのに」

「センスって言うか、ディスプレイされたのとひとみを照らし合わせただけ」


 情けないことに、自分の服のセンスは壊滅的なのだ。


 いくら自分を着飾ろうとしても上手くいかず、段々めんどくさくなった結果。


 夏は、上はTシャツにジャケット?かポロシャツに下がジーパンになる。冬は上は適当というか重ね着するので大体がパーカーとなり、下はジーパンというなんとも言えない体たらくなのだ。


 なので、冬は歩く雪だるまなのだ……けど、大きさが上下反対だが。


 だから、母さんの言葉は的を得ていてそう言われても仕方ないが、多少は息子の成長を認めて欲しいものだ。


『ただいまー』


 やまびこのように親父の声が聞こえてきて、どうやら仕事から帰ってきた。


「あれ、親父仕事じゃなかったの?」

「ああ、一旦帰ってきたんだが部下から連絡が来てな。再度着替える暇がなかった」

「そうなんだ、お疲れ様」

「かずも色々あったみたいだから、ちゃんと休めよ。ひーちゃんは?」

「Wひとみで風呂」


 自分で言ってて思ったけど『Wひとみ』ってどこかのグループみたい。


 手を洗いに洗面所に行こうとしたが、隣が風呂場なのと『ちょっと、胸揉まないで』とまたもや花園が大変なことになってるのと、俺の理性がやばくなりそうだったので、自分の部屋のキッチン兼洗面所で済ませることにしたのだった。


 よく考えたら、先に風呂に入らせたら駄目じゃない?


 あの服装を見てるのと風呂から上がってきたひとみの姿に俺の理性と来れば、結論なんて簡単……と思ったけど今の俺はとにかく自分の胸の中にひとみを置いておきたい気持ちの方が強かった。


 けど、それがいつまで持つかは予測できない……もし、お願いでもされたら断れないのだから……ならないことを祈るしかなかった。


 と、俺の部屋の扉が静かに開くとそこにいるのは当然。


「おまたせ、あなた♪」

「おかえり、ひとみ。ねぇ、抱きしめてもいい?」

「どうぞ♪」


 俺は、ひとみに了解を取ると強く抱きしめ、こうするだけで俺の心は癒されていくのが分かる。


 ずっと、こうしてしていたいのがあるけど今は冬で俺の部屋は天然冷蔵庫に近いので、すぐに着替えさせる。戻ってきて風邪をひかないようにエアコンはつけてあるが念のため。


 着替えて、ベッドに並んで座るとひとみが俺の肩にもたれてきたので俺はひとみの肩を抱き寄せるように支える。


「あなたに抱き寄せられると安心する。『俺の物』って感じがして」

「昨日と今日はあまりにも弱気過ぎたよ。今日は日中のことがあまり思い出せない」

「思い出したくないなら無理しないで忘れたら?」

「いや、そうゆう訳にはいかないよ。ひとみの分かる事でいいから教えてくれないか?」


 ひとみは、俺の願いを聞いてくれて分かる限りのことを全て話してくれた。


 そんな中、ひとみは俺との会話の中で驚いたことがあったらしい。


「じゃ、あなたはあの時は自分が何をしようとしたか分かってなかったの?」

「ああ、ひとみの手のぬくもりで意識が戻った感覚だった」

「そんなに思い詰めてたのね……」

「自分を責めるのはやめてくれ。頼むから」

「うん」


 それに関しては俺個人の責任であって、ひとみが責任を負うことではないのだ。


 それからのことを話してくれて。


「それで、中田先輩が代表で称賛の言葉をくれたの」

「そうだったのか、それで俺はそのまま眠ってしまって亀尾と鈴田に教室に運ばれた訳だ」

「うん、でも嫌な顔はしてなかったよ」

「起きてからは記憶がしっかりしてるから大丈夫だよ。けど、礼はいらないって言われてもな……」

「あなたが礼をしたいと思えばすればいいと思う。言葉だけでも」

「そうだな、いいアドバイスありがとう」

「ねぇ、あなたもお風呂入ってきて。その間に布団温めておくから」

「俺が入ってきたら寝てると言うオチは無しだぞ?」

「……えへへ」


 うん…‥確実に寝るねこれは。まぁ、迷惑も掛けてる訳で疲れもたまってるから寝てしまうのも仕方ないと思ってしまう。


 俺は、どんな状況を受け入れるつもりで風呂場に向かい、全てを済ませると湯船に入って軽く自問自答していた。


「本当にやらかしたな。でも、なんでこんな大事になったんだだろう?まぁ、時期がズレたのがあるにしてもやり過ぎ感が否めない。学校側が決めた以上は俺が気にしても仕方ないもんな」


 俺はこの時、週明けにこの件で呼び出しを食らうなんて思いもしなかった。


 とりあえず、風呂場で全てを洗い流して部屋に戻るとひとみが……


寝てはいなかったがウトウト状態でメトロノームのような状態になっていて思わず笑いそうになってしまい、その姿を見られた瞬間、布団に隠れてしまった。


 時間も時間なので、俺もそのまま布団に入るやすぐにひとみを抱きしめた。


「もう、笑うなんて酷いよ……頑張って起きてたのに」

「ごめんな、もう寝てると思ってたから。それにあれを見たら誰だって笑いそうになるよ。でも、半分わざとだろ?」

「っ!な、なんで分かったの?」

「ウトウト状態の時は本当だと思ったけど、気づいた時の素早さが寝そうな人間のスピードじゃなかった」

「完璧に立ち直ってるあなたには通用しなかったね♪」

「寝てたら寝てたで優しく布団に寝かせて抱き枕にするつもりだった」

「今は?」

「勿論、抱き枕にするよ。抱きしめたい」

「私は、あなたに抱きしめられたい。お願いします♪」

「了解」


 俺は、ひとみを優しく抱きしめて『俺の物』ってくらいにマーキングをしていたが、ひとみは嫌がることなく俺の行為に応じていた。


「ねぇ、明日は私のことをちゃんと意味で抱いて欲しいの」

「俺もお願いしたいと思ってた。ひとみが欲しいから明日食べられて下さい」

「はい♡」


 明日の予定を確約させた俺らは、お互いに抱き合いながら深い眠りについたのだった。

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