<閑話>メールの相手は?①

 <秀子side>


 先輩の不安定な理由が、あんな事だとはつゆにも思わずにいた。


 生徒会メンバーの考察で先輩の状態を理解した上で、こんな相談をしていた。


「さて、先輩のお仕置きはどうする?」

「うーん、今回はちゃんと言ってあげればいいんじゃないかな」

「まぁ、どうするかは週明けの先輩の顔を見てから決めよう」

「そうね、今日は奥様の手腕に期待しましょうかね」


 かおり、美優、アッコ、他の役員が色々と意見を出している最中、私はある人からのメールを受信していた。


『お久しぶりです。もし、お時間あればお話ししたいと思いまして連絡しました。無理であれば後日、都合のいい日を教えてください』


 と。相手は、先輩のお母さまでした。


 私1人でもいいのだが、洋太もいるので確認をすることにした。


「洋太、今日ってこの後に予定入ってたりする?」

「ないけど、どうかしたのか?」

「うん、これ見て欲しいのよ」


 私は、洋太に来たメールを見てもらうことにして、確認するや返答を求められ。


「秀子は、どうしたいんだ?」


 私?私の答えなんて決まっている。それに今日の事をあるから丁度いい。

 だから、こう答える。


「連絡もらった訳だから受けようと思ってるんだけど」

「すぐに『大丈夫です』って連絡しよう」


 洋太の後押しを受けて、おばさまに『はい、これから行けます』と返信するとすぐに連絡が返ってくる。


『JR大口駅の西口の改札口で待ってますので。急なことなのにありがとうございます』


 って返ってきた。あれ、この駅って。


「ねぇ、この駅って洋太が帰る時に通り過ぎる駅だよね?」

「ああ。一彦の奴、ここが最寄り駅だったのか」

「知らなかったの?」

「一彦と帰ることは無いからな、手前ってことはあそこでメール送ればいいか。秀子、手前の駅に着いたらメールを送ってくれ」

「分かったわ。おーい、みんなー」


 私は、みんなに声を掛けた。


「秀子、大声出してどうしたの?」

「そんなに大声ってほどじゃないでしょ……私と洋太なんだけど、用事が出来たから先に帰るねって伝えたかったのよ」

「あら、2人でお熱い時間でもお過ごしになるのかしら?」

「そ、そんな訳ないでしょ!」

「秀子、そんなに慌ててどうしたの?ひとみ達にいつもしてるのに」


 ねぇ、あの2人ってさ。今言われた以上のことを毎日のように言われるけど一切、気にしてないというかちゃっかりと受け入れてるよね!?


 ちょっと、あの2人のメンタルってどうなってるのよ!


 特にひとみは大概、喜んだ顔してるよね……あの子、毎日無敵状態じゃんよ……


「秀子?黙ってるけど怒ってるの?」

「あの2人のメンタルがダイヤモンドだなって思ってただけ。私が今の一言であたふたしてるのに、ひとみは全然動じないって言うか喜んでるから」

「あの2人を基準とするのは、色々と間違ってると思わよ」

「まぁね、でも私にとっては目標でもあるからね。目が追いかけちゃうのよ」


 先輩達が、北山先輩達を目標とするならば私は先輩達が目標なのだ。


 恋愛としては、私達の方が先輩なんだけどこれから先を一緒にいる為には、あの2人のようになりたいと思ってしまうのだ。


「そうゆうことね、用事があるのに引き止めちゃってごめんね」

「アッコ、用事って言っても急がないといけない訳じゃないから気にしないで」


 そう言うと、いつものアッコの顔に戻ったのを確認して『また来週ね』と言って生徒会室を後にする。


 そして、電車に乗って最寄り駅の手前の駅でおばさまに連絡を入れると『もういますので気をつけて来てください』って返ってきたので、私は慌てることなく最寄り駅に着き、改札口を出ると。


「荒本さん、奥田さん、急なことなのにありがとう」

「いえいえ、それで話ってあの事ですか?」

「ええ、それもあります」


『も』って言葉に私は引っ掛かりを覚えた。


 あの事だけならば含みを入れるなんて必要なんて無い。私の頭の中は朝からフル回転していたので、おばさまの意図が何となく理解が出来たのだ。


 だから、私はおばさまにこう言った。


「分かりました、今日のことをすべてお話しします」

「あら、荒本さんって秀才なの?」

「いえ、朝から脳内がフル回転してるので」

「とりあえず、ここじゃなんだから乗ってもらえるかしら?」

「「はい」」


 目の前に停めてあった車に乗り込むと、おじさまが運転していてベテランの運転をしていた。


 車に乗って、すぐに先輩の家に着くなり私達は家の大きさに驚愕をしていたのだ。


「一瞬、一彦がお坊ちゃんに思えてしまった」

「ごめん、私も同じ考えを持ったわ」

「ふふ、お坊ちゃんなのはかずじゃなくてお父さんの方ね」

「人様にそうゆうことを言うんじゃない」

「あら?かずよりも家事ができないのに?」

「……ごめんなさい」


 なんだろう、先輩とひとみが更に大人になったような感じの感覚……っていうか私からしたら、2人と瓜二つでどう対処しようか迷っていると。


「ごめんなさい、この家はお父さんが息子と娘の要望を聞いたらこうなったのよ」

「そうなんですね、瞳ちゃんは思春期ですもんね」

「ええ、どうぞ入ってください」

「「お邪魔します」」


 私達は、リビングと思われる場所に私と洋太とおじさまが座っている。


 おばさまは私達の為に準備をしてくれているらしく、大人しく待つことにするとおじさまからこんなことを聞かれた。


「そういえば、かずとひーちゃんは学校では相変わらず?」

「はい、見てるだけで私達まで微笑ましくなります」


 事実で、暑苦しいなんて全く思わないしずっと見てても飽きないくらい。


 だって、ひとみの顔が嫌でも分かるくらいに色々と変わるから。


 すると、おばさまが飲み物等を持ってきてくれてその場に座ると、おばさまからこんなことを言ってきた。


「あの、荒本さんは私が聞きたいことを理解をしてるのよね?」

「はい、っていうか今日はそのことで持ち切りだったので」

「それってどうゆうこと?」

「えっとですね、実は……」


 私と洋太で、今日の出来事を出来る限り話すとおばさまは『はぁ~』と溜息をついていた。


「全く、気にするなって言ってるのに」

「おばさま、先輩の状態って昨日からなんですよね?」

「ええ、2人はあの子達がどこに行くか聞いてる?」

「いえ、行く所があるしか聞いてないです。しかも、今日の先輩の状態があれでしたので」

「全く、後輩に心配を掛けるなんて」

「心配って言うか、あの一つ聞いてもいいですか?」

「大丈夫ですよ、なにかしら?」


 私は、先輩の自己評価の低さをご両親に聞くことにした。


 今日の事だって、十分すぎるほどに『称賛』されているのに本人は『迷惑』って言ってるのは、何故なのか?


 多少なりとも先輩の過去を知ってるけど、あれだけで自己評価が低くなるとは思えなかったから。


「先輩って、どうして自分を低く見てるんでしょうか」

「なにかあったの?」

「はい、さっき言ったこと以外にも別な案件がありまして」


 さっきほど話したのは、先輩の状態であってマラソン大会の件は触れていなかったのだ。

 これも伏線としては成り立っているので話そうか悩んでいた。


 なので、自己評価の低さの理由をこれを言って、ご両親の意見が欲しかった。


 私が、マラソン大会の件を最初から最後まで話すと。


「2人は、うちの子のことをどこまで知ってるの?」

「先輩が、不登校で1年半を棒に振ったっていうは聞きました。そのおかげでひとみを取り戻すことが出来たって言ってましたから」


 おはさまは『なるほどね』って感じの表情をして、私たちに。


「それしか話してないってことね。あの子の自己評価の低さは『人』を信用し切れないからなの」

「人を信用し切れないって……」


 私は、その言葉を聞いてただ茫然とするしかなかった。

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