日常㉓
身だしなみをお互いチェックして、大丈夫なのを確認すると恋人つなぎをしながら、ひとみの教室に向かいながら話をしていた。
「ありがとう、恥ずかしくなかったか?」
「我慢してたでしょ……大丈夫?」
「俺は大丈夫だよ、いつでも欲しいと思ってるのは間違いないからな」
「バイトが終わったら、たくさん甘えていいからね♪」
「今でも十分すぎるほど甘えているんだけどな。これ以上甘くされたらダメ旦那だな」
「もう、そんなことないから。あなたは最高の旦那様です♪」
奥様が可愛すぎてこの場で押し倒したくなるけど、理性をフル回転させて自重させる。
ひとみを教室に送り届けると、娘達がこっちに寄ってきた。
「今日はどっちだったんですか?」
「今日は、恋人同士でデートしてたよ。ちょっと前を思い出してな」
「ちぇ、騙されなかったか」
「昨日の俺なら引っ掛かってたな。今は問題ない」
「さすが先輩ですね。これは放課後のあれで勝負ですかね」
「そうだな、ひとみがコーチだから一歩間違えたら俺が死ぬな」
「ひとみ~、先輩に勝ちたいから秘策教えて」
「秘策ね~?旦那様より楽しむことかな♪」
単純に勝負するなら大きな役で攻めれば十分すぎるほど勝機はあるけども、勝負って言っても単に言ってるだけなので、ひとみも理解しての返答だった。
正直な所、誰がコーチについても勝利に導くことが出来るから油断はできないが、俺の手の内を知ってるひとみが一番怖いという結果になる訳だ。
放課後、バイトまで1時間半くらいしかないので朝のメンバーは早速卓に座り朝の状態からスタートする。
朝の状態でも一進一退の状況でもあったので、俺が恐れているのは松木よりも秀子と洋太だった。
だが、楽しいんだ方が勝ちを証明するかのように秀子と洋太が明るい表情で打ってると。
「これって、リーチした方がいいのかな?」
「牽制にもなると思いますからいいと思いますよ」
「ありがとう、それじゃリーチで」
「お、おい。あまりにも早くないか」
「とりあえず、洋太の切ったやつを切るしかないか」
俺も安全策で洋太の切った牌で切って、秀子が次の牌を取った時だった。
「ねぇ、これならリーチできるんだよね?」
「ええ、大丈夫よ。してみる?私はコーチで洋太先輩がリーチしてるから今はアドバイスは出来ないから自分で決めるしかないかな」
「楽しまないと意味ないもんね、よしリーチで」
この時点で初心者2人がリーチということは、普通に考えれば安い手だと思う所だが、ひとみがコーチなので油断は禁物。
それは、松木も感じ取れたようで俺と違って声に出ていたけどな。
といっても、初心者2人がここまでやっているのに対して、俺らが尻込みしていては意味無いので、俺も攻めることにした。
「松木、悪いが俺もリーチだ」
「はぁ、マジかよ……最悪3人同時にきそうだから逃げるわ」
と言って、そうそうに逃げ出す豚さんであったが俺はリーチした以上は逃げ出すことは出来ないので、当たり牌ではない場合はそれを切らないといけないのだが。
「あ、それロンで」「私もロンなんだけど」
「……マジかよ。ひとみ、牌計算お願いできる?」
「えっとね、洋太先輩がドラが乗って満貫で秀子が倍満だね」
「俺、飛んだじゃん……ダブロンで飛ぶって初めてだわ」
「わーい、先輩に勝ったー。洋太、2人で先輩倒したよ」
「余程、勝てたのが嬉しいんだな。こんな秀子は久しぶりだ」
「先輩がリーチした時は、やばいって思ったけどドキドキ感がたまらない」
牌を見ると、一瞬間違えてしまいそうになるところをしっかりと区分けしてミスしないように分けていた。
俺が以前に言ったことを実践しているで、練習の結果と楽しむことの強さの勝利だな。
名残惜しいが、そろそろバイトの時間なので席を立ち。
「さて、そろそろ行かないと」
「楽しい時間はすぐに過ぎちゃうね♪」
「ああ、秀子。飲み物奢るから昇降口までついて来てくれないか?」
「りょーかいです」
「松木、洋太、後は頼んだ。今度は負けないからな」
「バイト、頑張ってな」
俺とひとみと秀子は昇降口まで行き、2人の分のドリンクを購入して秀子に渡す。
「先輩、これって洋太の分ですか?」
「当たり前だろ、2人で俺を飛ばしたんだから。ナイスゲームだった」
「ありがとうございます、あんな楽しいことを教えてくれて私達は幸せです。2人ともバイト頑張ってくださいね」
「ああ、いってくるよ」
「いってらっしゃい」
見送ってくれる秀子を背に俺らはバイトに向けてお店まで歩き出す。
「まさか、2人とも同じ上がり牌なんて思いもしなかった」
「よかった、顔に出てないか不安だったから」
「見事な指導だったよ。2人がリーチして俺らが逃げる訳にはいかないからね」
「松木先輩は、すぐ逃げたけどね♪」
「けど、あいつのやり方も間違いじゃない。だから、俺は別のやり方が必要だったんだ」
「逆もありえたってこと?」
「いや、松木は北山先輩を見てるから逃げ方も知ってるけど俺は飛んだとしても楽しめればそれでいいから」
「あーあ、これだったら松木先輩にコーチ役にすればよかったかな」
「どうして?」
「だって、あの場面を見てるだけなんて嫌だもん……」
か、可愛い過ぎて理性が一瞬飛びそうになってしまったので、俺はひとみをその場でギュって抱きしめた。
「あなた、どうしたの急に?」
「大丈夫、俺はひとみしか見てないんだから。2人が成長したらずっと俺のそばにいてもらうから」
「後ろから抱き着ててもいい?」
「いいに決まってるし、してもらいたいから俺からもお願いするよ。でも、そうすると打てなくなるぞ?」
「そうしたら、私が打ってる時にあなたが私に抱きついてくれるもん♪」
まぁ、考えてることが大体一緒だから必然とその答えになるのは当然のことであり、驚きもしないというか、嬉しさの方が勝るのだ。
ひとみが笑顔でいてくれるなら、俺はそれを絶やさないようにするだけの話。
今日もバイトをそつなくこなして、バイトを終えると俺は帰路に向かう最中にひとみにこんなお願いをしていた。
「いつもの公園で膝枕を少しだけしてもらってもいいか?」
「え、それだけでいいの?」
「ちゃんと甘えるよ。今日は夜空が綺麗だから膝枕をしてもらいながら見上げてみたくてさ」
「いいよ、私も少しだけお願いをしても良い?」
「出来ることならなんでも。さっき、母さんからメールで瞳は大丈夫って来たよ」
「ほんと!明日が楽しみになってきた♪」
本当に妹のことが好きなんだなって思った。
だって、この笑顔は作り笑顔で出来るものではなくて、自然と出てくる笑顔で俺が一番好きな笑顔だから。
そんなことを話しながら、いつもの公園に着くとひとみが俺の身体を倒して仰向けにしてくれた。すると。
最愛の人の笑顔に、満天の星空が俺の目を覆い尽くしていて感極まってひとみの腰に抱きついてしまった。
「あなたと付き合ってなかったら、こんな素敵な星空を見ることは無かったんだね。ありがとう、私を攫ってくれて」
「お礼を言うのは俺の方だよ。絶対に離さないからずっとそばにいてな」
「私から離れるなんて、絶対にしないよ。私達は離れることはないから」
少しの間、2人してお互いを見つめ合い、夜空を見上げていると俺のお願いは達成できたので、ひとみのお願いを応える。
「ひとみは、俺に何をして欲しいの?」
「あのね、今あの日に入ってるの。それで、すこしだけいいから私の身体に悪戯して欲しいの」
「もしかして?」
「……うん。だからお願いしてもいい?」
「ここでいいのか?」
「家だと我慢できなくなりそうだから……ここなら、私達が最悪でもキスしてるだけに見えるから。お願いしてもいい?」
「ああ、立てなくしてやるからな。覚悟してくれよ」
俺は、ひとみにあることを教えることになるとは思いもしなかったのだった。
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