前夜

 ひとみから『一緒にいたい』と言われた俺は、当然ながら断ることはせずに、了承すると俺らはお互いの家に確認をとる。


 恋人同士だからといって、両親に養ってもらって以上は両家の了承が必要なのは理解しているので、以前に了承は得てるが俺らはそこだけはちゃんとしようって決めたのだ。


『もしもし、かず?どうしたの』

「ごめん、急なんだけどひとみの家に泊まることになった」

『あら、そうなのね。明日のことを聞こうと思ったんだけど』

「ああ、俺もそうするつもりだったけどな。瞳は?起きてたら代わって」

『ちょっと待ってね』


 母さんは妹を呼びに行き、すぐに電話に出た。


『お兄ちゃん、どうしたの?』

「今日、ひとみの家に泊まることになってさ。ケーキの方は、どうなってる?」

『下準備とかも出来てるから大丈夫だよ』

「そうか、明日楽しみにしてるな。ありがとう。悪いけど母さんに代わってくれるか?」

『それでかず。明日は何時にみんなを呼んでるの?』

「7時にお店に来てくれてって伝えたよ。大丈夫?」

『ええ、私達の方は大丈夫だから。明日、ひーちゃんよろしくね』

「ありがとう、母さん。おやすみ」


 電話を切ると俺はすぐさま、メールを打ち返信を待つとすぐに返ってきたので電話をするとワンコールで応答した。相変わらず早いな。


『もしもー、先輩。どうかしましたか?』

「大したことじゃないんだか、秀子達は明日の服装って私服か?」

『そのつもりですけど、何を考えてます?』

「物分かりが早くて助かるわ。実は……なんだけどお願いできるか?」

『そうゆうことなら、そうした方がいいでしょうね。それを私がみんなに回せばいい訳ですね』

「また、めんどくさいことお願いしてすまないな」

『いえいえ、これくらいなら私は全然いいですよ。明日、頑張りましょうね』

「ああ、明日は頼むぞ。おやすみ」


 この時、すでに女子は揃っていて尚且つ制服姿だったので察しとかの問題ではなく、俺を除く男性陣に連絡が飛んだのだった。


 そういえば、やけに後ろが騒がしかった気がする……しかも、知ってるような声も聞こえたが気のせいだろう……


 電話を切ると、ひとみがドアから顔出しているのが見えて一瞬だけ電話の内容を知られていないか、不安になったが電話を切る直前にドアの開く音がしたので、大丈夫だと判断することにした。


「あなた、お義母さんなんだって?」

「大丈夫、ちゃんと了解をもらったよ。今電話してたのは松木からだった」

「お義母さんとの会話じゃない感じはしてたけど気にしてないからね♪あ、お母さんもいいって」

「なら、早く中に入ろうか。風邪ひいたら大変だからな」

「もう、過保護なんだから……私は本当に愛されているな♪」

「俺がひとみを愛さない時は、病気だと思ってくれ。早く入ろう」


 ひとみと共に家の中に入るとお義母さんがいたので『お邪魔します』と言って上に上がった。


 ひとみには『ただいま』と言わせておきながら俺は未だに『お邪魔します』なのかどうかと思ってしまうが、関係が曖昧になってしまうのであれば今のままが一番なんだろうなと思った。


 お互いがベッドに座ると、ひとみが『今日は寒いからうちのお風呂ね』と言われて先に入らせてもらって、部屋で一人になると考え事をしていた。


「さて、予想が少しだけズレたけど問題はないな」


 まさか、ひとみから『一緒にいたい』なんて思わなかったけど俺もやっぱり一緒にいたかったんだって思った。


 そうでなければ『今日は帰る』っていうはずだし。


 それにさ『食べていい』なんて言われたら我慢なんて出来る訳ないのは自分が一番分かっている。


 俺が『したい』ということは口に出さないだけで心の中はいつもそう思い、いつ支配されるか分からない始末。


 以前も『したい時は言ってね』って言われたけど、やっぱりお互いの気持ちがあってこその行為だから、俺の欲望だけでひとみを抱くのは嫌だった。


「やっぱり、俺の思っていることって綺麗事なのかな……」

「何が綺麗事なの?また、悪いこと考えたでしょ〜」


 ひとみがいつの間にかお風呂から上がって戻って来ているのに気付かなかった。


「悪いというか卑しいことだな」

「卑しい?あなたの何が卑しいの?」


 火照った身体をベッドに座っていた俺の横に座ると、いい匂いが鼻を抜けていくのと理性が飛びそうになっているのが自分でも分かった。


 ひとみが横にいるだけで、俺のがしっかりと反応をしているからだ。


 全く、節操がなさすぎだろうよ。


 すると、不意に横から抱きしめられて防御すらできずに二人ともベッドに倒れ込むとひとみからキスが飛んできた。


「んん……んっ……いいの」

「え?」


 一瞬、ひとみの言葉が理解できなかったが多分だが、俺の言ってた意味を理解したんだろうな、そうゆう時の勘の良さはさすがなので。


「私はあなたの物なのよ。だから、あなたの欲望は全部受け止めるから」

「ひとみ……」

「お願い、もう少しでいいから我が儘になって欲しいの」

「それは、俺がいつも言っている我が儘とは違うだろう?」

「あなたは私に我が儘言ってないもん」


 俺の我が儘………俺にとってひとみがいるだけで幸せだから。


 我が儘なんて言うことは必要ないと思っているのは事実で、しかもひとみと俺の我が儘も大体が同じだったりするものだから。


「そうかもな」


 そんな呟きを漏らすとひとみは優しく微笑んでくれた。


「そうだよ、いくら私と同じ思いを持っていてもあなただけの我が儘があるんだから。それを私は自分で嫌って言わない限りは受け入れる」

「それだと、俺はひとみを壊しそうで怖いんだよ」

「これは私の主観で他の女の人はどうか分からないけど、私はあなたに毎日抱かれてもいいと思ってるよ。ううん、抱いてくれるなら毎日抱いて欲しいって私は思ってるから。あなたが思ってる以上に私はエッチな子なの」

「ひとみはそれでもいいのか?」


 結局な所、自分が自分を抑えきれなければ欲望に身を任せた単なる野獣にしかならない。


 そんな姿をひとみに見られたくないだけの小さい男なのだ。


 そんな俺の思いを感じ取ったように、ひとみは俺のをさすり始めてた。


「今日は私があなたを欲しがってるみたいだから食べちゃうね♪だって、こっちも欲しがってるみたいだから」


 その言葉に俺の理性は完全に飛んでしまった以上、もう止めることは出来ないので俺はひとみに懇願した。


「いつものやつをして欲しい。最後までしてくれるか?」

「いいよ♪私もあれしても良い?あなたはいつもダメって言うけど今日は欲しいから」

「無理だったら、すぐやめるんだぞ」

「はーい、はむっ、んんっ、ちゅぱ……ん」


 ひとみは俺の要望にしっかりと応えて俺を愛してくれるので、俺もひとみの双丘を優しく邪魔しない程度に揉んでいた。


「あっ!んん、も、もう、そんなことされたら私が我慢できなくなる」

「ひとみだって、うっ、分かってる癖に俺がどんな状態か。ああっ」

「あんっ、あなただって知ってる癖に意地悪なんだから。でも、今日は私があなたを壊すんだからね」


 ひとみの攻撃は終わることはなく、俺はもう成すがままの状態になっていて、ひとみに従うことしか出来なくて……


 そして、ついに限界を迎える……


「ひ、ひとみ、もう俺……」

「いいよ、ちゅぱ、頭ちゃんと押さえててね、はむっ、んんっ!」


 ひとみにそう言われて頭を押さえて、抗うことはできずにその流れに乗るしかなく……俺は……


「うっ!」


 俺の欲望が爆発して、ひとみの頭をしっかりと押さえつけていたの見て罪悪感に駆られてしまったが、ひとみは有言実行をした。


「ひとみ、大丈夫か?無理するな」

「ら、らいじょうぶだよ、んっ、んん。最後まで出来た♪」

「気持ち良かったよ、嬉しかった。喉大丈夫か?」

「少しだけ変な感じするけど、あなたのだから♪」


 今までは、最後までは絶対にさせることは避けていた。


 その行為だけは非現実的な事だと思っていたから。


 でも、最後までやり切ったひとみの顔は妖艶な顔つきをしており、俺のがすぐに元気になってしまったのだ。


「ひとみ、俺もひとみが欲しい」

「よかった、その気になってくれて。私も欲しいの、早く頂戴」

「愛してるよ、ひとみ」

「私も一彦のことを世界中の誰よりも愛してるから……あ!」


 最後まで言わせることはさせず、ひとみに食らいついて『もう、あんっ、いきなりなんだから、んっ!』言われても俺は腰を振るのを止めることはしない。


 ひとみもそれに合わせるように『もっと』って耳元で悪魔のささやきをしてくる。


「今日のひとみは、本当に悪魔のように見えるよ。溺れそう」

「溺れて、んんっ!チュ……私の事だけ、私で沢山溺れて、あんっ、それ深いの」

「気持ち良くて、止まらない」

「止めないでね、もっと激しく、あなたが欲しいの!あんっ、んんっ、チュ……」


 ひとみの願いは俺の願いなのでお願いされたことには全力で応えるが……


「ひとみ、そろそろ限界が……いいか?」

「はい、あなたの好きな時にどうぞ♪最後にもっと激しくして」

「ああ、行くぞ」


 ラストスパートをかけて腰を突き出して、下に響かない程度に肌と肌がぶつかり合う音が鳴ると俺の頭は完全にぶっ飛んだ。


「もう、ダメ……」

「わ、私もダ、ダメ!あ!」


 ひとみの嬌声を最後に俺らは果てたのだった。


「はぁ、はぁ、ひとみ?大丈夫か?」

「ふみゅ~、今日は沢山愛されちゃった。誕生日プレゼントありがとう♪」


 よく見たら、日付が変わっておりひとみの17歳の誕生日を迎えていたのだ。


「あ、ほんとだ。でも、これが誕生日プレゼントでもいいのか?」

「うん、私にとっては最高のプレゼント♪」

「そうか、ひとみ。17歳の誕生日おめでとう。誕生日に一緒にいられてよかった」

「私は、生きてきた中で最高の誕生日になっちゃった♪」

「でも、誕生日プレゼントはこれじゃないからな」


 最高の誕生日プレゼントはちゃんと最後に残してあるから覚悟してね。


「今日だけは沢山甘えるからもしれないけどいい?」

「当たり前だろ、ひとみの誕生日なんだからとことん甘えてな。そろそろ寝ようか」

「もうちょっと余韻に浸りたいけど、あなたの言う通りにするね♪」


 少し、頑張り過ぎてしまったが下に聞こえていないか心配になってしまったが、ひとみの余韻に浸る顔を見て、気にするのはやめた。


 2人で布団の中に入り、抱き合ったまま30分もしないうちに俺らは眠りについていた。

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