初めての後輩
生徒会室に初めて入室した時から数日が経った頃に、松木達から不意に声をかけられた。
3人揃っているってことは生徒会絡みなのは解ったけどさ、一つだけ疑問。
でもさ、俺サポーターだっけ?なった覚えはないんだが?いつの間に?
もう、?マークしか出てこないけどとりあえず、話くらいは聞いてやるかな。特にやることもないし。
「お、イジリー松木どうした?」
「言い方な。某危ないタレントみたいに聞こえるだろが!」
「やらないのか?つまらんなお前は」
「やらねぇよ!そんなことしたら品格落ちるだろう!」
お前の口から『品格』って言われても元々品格ゼロじゃねかよ!大体、俺が言ってることが返せてる時点でアウト案件だわ。
このままだと、話ができないので一言だけ言って終わらせようか。
「いや、もうとっく落ちてると思うから安心していいぞ。で、何?」
「お前って俺にだけ滅茶苦茶雑じゃね?鬼じゃない?」
「問題無い。それとも退治されたいのか。よし、家来連れてくるわ」
「お前は桃太郎か!そもそも鬼は志村なんだが………もういいや。志村、この後時間あるか?」
鬼は俺の方だったらしい。
まぁ、松木が桃太郎なら返り討ちに出来る自信はあるな。寧ろ、家来すらこっちに付きそうだな本気で……哀れ……だ。
「今日バイトないから家に直帰予定だが?」
「なら、生徒会室来てくれないか?手伝ってもらいたいことがあってさ」
「俺でよければ。飲み物で手打つわ」
「サンキュー。だが断固拒否する」
拒否するものの結果的に俺に献上する松木であった。哀れな子羊、いや子豚よ。
頼むから少しは撥ね退ける力を付けてくれよ……
俺と役員の3人は生徒会室に向かいドアを開けると前回とは違う風景で生徒会室本来の形というか俺が思っていた景色である。
今日は、なんかの打ち合わせらしい。なんか行事ってあったけ?
とりあえず、空いてる席に座ると横に女生徒が座っていたのだが同級生で見たことはないのできっと下級生だろうと思った。
黒板にはまだ何も書かれていなかったので俺はとりあえず、その女生徒に声を掛けてみた。
見た感じとても優しい感じがした。
「お疲れ様です、これってなんの会議ですか?」
「文化祭で生徒会がやる催し物についてですね。何するかまだ決まってないので意見を出し合ってる所なんですよ」
女子生徒は気軽に答えてくれた、初対面なのに何の疑問もなく。
俺は、一応気になったことを聞いてみた。後輩なのか先輩なのかが分からないのだ。
先輩ではないだろうけど、これで先輩だったらびっくりだよ........先輩も正直な所北山先輩と剣山先輩と中本先輩くらいしか知らないからな。
「1年生ですか?間違えていたらすいません」
「はい、1年の藤木です。生徒会の書記をしています」
「役員だったんですね」
「松木先輩達と一緒に来たってことは先輩ですよね?」
「会長・副会長と同じクラスの志村って言います」
「3人と同じクラスなんですね、賑やかそうですね」
「賑やかすぎて疲れるよ、藤木さんのクラスは賑やか?」
「うちは普通ですね」
「普通が一番ですよね」
「普通もいいですけど、多少の賑やかさは欲しいですね。あ、後輩なのでタメ口でお願いします」
そんな他愛ない会話を続けていると会長が声を発した。
「これから文化祭の催しについて打ち合わせを行いますので書記の藤木さん黒板に書き込みお願いします」
「はい、分かりました」
彼女は、会長に呼ばれ黒板に向かい言われたことなどを細々と書いていく。
俺は、ふと思った。字がとても綺麗というかしっかりしていた。
あんな綺麗な字は久しぶりに見た気がするなって思いながらいたら会議もある程度進んだところで日も傾いてきたのでここ辺で終了らしい。
俺は、横の席に戻ってきた藤木さんに声をかけた。
「お疲れ様。黒板に書いた字すごく綺麗で見やすかったよ」
「ありがとうございます、自分ではあまり綺麗とは思ってないので」
「そんなことないよ」
2人で何気ない会話をしてるのと、鍵山から声が発せられた。
「えー明日も会議を行い、詰められるところは詰めたいので出席できる人よろしくお願いします」
言い終えると鍵山会長が『お疲れさま』と声を上げみんなが続々と立ち上がり生徒会室を出ていくのに俺と松木と藤木さんも生徒会室を出た。
藤木さんは、この後バイトがあるらしく軽く会釈して学校を後にした。1年からバイトしてるのか偉いな。高校生なら普通なのか?でも、偉いな。
俺と松木は鍵を職員室に返してから学校を後にした。
俺は、松木と一緒に駅へと向かっていた。
電車に乗る前に駅の目の前の酒屋でイカ焼きを購入して電車来るのを待つ。イカ焼きを食ってる俺に松木がこんなこと聞いてきた。
「お前、藤木さんとなに喋ってたんだよ?」
「別に、同学年で見たことないから下級生か上級生と思って聞いてだけだ」
「そうなのか?なんか親しい感じに見たからよ」
「どう考えたって初対面って分かってるだろ」
「いや、もしかしたら面識でもあったかな思ってよ」
「そりゃ、お前の被害妄想だ」
「ひどい言い草だな!」
松木は、俺を糾弾してくるが、俺みたいな日蔭キャラがそんなこと出来る訳もないのはこいつだって分かってるはずなのに……俺と同類が。
なので、めちゃくちゃ雑に返すことにした。
「いや、初対面の人に対していきなり親しくできないだろう」
「まぁ、お前は鍵山みたいチャラくもないからそう簡単に声はかけられないな」
「そうだよ、それに字がすごく綺麗だったから誉めただけだっていうかどさくさに紛れて失礼なこと言うな」
「え、あいつと同じ扱いでいいの?」
「この野郎、どこかの肉屋に売り飛ばしてやろうか!売れればだけどな!」
こいつは、稀に痛恨の一撃を放ってくる。まるで某ゲームのゴブリンやスライムのような雑魚キャラにやられるなんて御免なんだが?
実際問題、鍵山と同じ扱いにされたら色々と面倒なことになりそうだし。
「いや、それは困るって言うか嫌だな。嫌われる未来しかない」
「お前もあいつに対して結構失礼だけどな」
「あいつに対しては無効だ」
「お前はジャイアンか.......」
「歌の下手さならジャイアンといい勝負だけど体系だけならお前の方がジャイアンなのに。ちょっとここで歌ってみろ」
「やらないし、俺をジャイアンにするな」
そんなひねくれた話してるうちに電車がやってくる。話に夢中?になっていた俺はイカ焼きをどうするか悩んだ。
答えは至極簡単、電車内で食う。だって、捨てるのは嫌だし……
ちなみにこの行為と座り込みは当校の生徒の大半はやっている。大変迷惑のは重々承知の上での行為。
俺は、松木と別れ一人電車で帰る中でふと思っていたことがあった。
「あんなに気軽に話したのって久しぶりでなんか楽しかったな。ああやって話したのは書道教室で一緒だった子以来かな?いや、あの子がいたな」
俺は、昔のことを少し思い出していた。嫌な時があったと言えど良いことがなかった訳ではないのだ。言うならば小学5年から中学1年までは仲のいい女子はいたし、色々とお世話になったな。変な意味ではないので勘違いはしないでもらいたい
「あの子もだけど、意外と女子との接点があったんだな俺って」
ただ、恋愛感情が出るまではいかなった。気の合う仲のいい異性という感じだったがもう少し頑張れば恋愛感情が出そうな子はいた。
変わりゆく景色を見ながら独り言呟いたのは生徒会室で少しだけ話した藤木さんのことである。
不思議だった。
初対面であんなに軽く話せたのはいつぶりだろう?いや、初対面で軽く話せたのはきっと初めてだ。昔でも多少はしどろもどろになってた気がする。
「なんか良さそうな子だったな。まぁ、そんなに顔を合わすこともないだろうけど役員だから俺が行けば会うことにはなるのか」
そんな飴と鞭みたいな言い方をして自己完結した。
1年生の藤木ひとみ。
容姿は、俺の理想のような体系をしていて顔に関しては美顔ではないが落ち着いた顔つきで親しみやすく感じがした。
黒髪が光っていて、セミロングがよく似合っていた。触ったらサラサラするんだろうなって思うくらいに。
彼女は一切の背伸びをせずありのまま過ごしてる感じでキラキラしていた。
この下級生こそ、俺の今までの人生の根底からすべてを変えてくれる人になるなんてこの時は微塵も思っていなかったのだから。
『これが、運命の始まりとは誰一人思っていなかったと思う。また1つ歯車がカラカラ回る。誰も気づかないような小さな音でずっと回り続けているのはいずれ誰かが気づいてもらう為に』
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