気になるあの人……そして

 俺が奥田たちと話し終わって、教室が出る前にふと目が追ってしまっていたのはとある1人の美少女である。


 少しだけ語弊があるかもしれないが、俺から見ればそう見えてしまうのだ。


「どうした、志村。なんかあったか?」

「いや、なんでもないよ。行こうか」


 中田が不思議に聞いてきたが俺は適当に答えた。


 ふと目に入ってきただけなので、無かったようにして出ようとしたら山川と奥田から発せられたのは。


「内路か」

「まぁ、容姿はいいもんな。あいつ」

「たしかに、俺の中学でもあんなスタイルの良いのはいなかったな」


 俺が『内路』って子に目を向けていたのが簡単にばれてしまい、俺ってそんなに彼女に目向けてたのか?と思いたくなるほどだった。


「なぁ、容姿はってことは性格が悪いとあるのか?」


 2人が微妙な反応をしていたので俺は不思議がってそんなこと聞いてしまった。


 俺の質問に返してきたのは奥田だった。


「いやそんな気がしただけだ。気悪くした謝るよ」

「大丈夫だよ、この学校にあんな可愛い子がいるなんて思ってなかったらさ」

「まぁ、俺にとっては単なる目の保養って感じだな」

「それを言える山川が凄いって思えたよ」


 山川が爽やかに言ってくるが、いつかそんな風に言ってみたいと思う俺だったが、それをも覆すことをするとは思う訳もない。


 そう言ってこの話はお開きとなり、教室に戻ったのだった。


 でも、この時から俺は気になってしまっていたが、女子と話す勇気が無かったので彼女を見かけてから数か月の間、話す機会すら無かった。


 しかも、正直話す内容だってどうしたらいいのか分からないのでそれが余計に輪を掛ける。


 っていうかあんな綺麗な子は、うちの周りでは見ない。


 可愛いと思える子は多少はいたけどあそこまで容姿端麗はいなかったが、いたら色んな意味で大変だろうけど。


 彼女の名前は、内路美希。


 スレンダーなスタイルに整った顔立ちで声も可愛い声をしていて、この子を好きじゃない奴がいるのかって思えるくらい。


 そんな彼女が俺は気になっていた。


 一瞬だけ、アイドルではないかと思ってしまったくらいであるがそう思ってしまったのは地元でもこれだけの容姿端麗は見たことないから。

 

 そんな彼女に俺は何度か目が向いてしまっていたのだ。


 簡単に言ってしまえば一目惚れである。しかも、容姿端麗という外見で判断した最低な一目惚れ。


「あれだけ可愛ければ彼氏は当然いるだろうな」

「まるで高嶺の花って感じだもんな」


 と山川と奥田が率直な感想を言っていた。ド正論だもんなそれ。


「そうだよな、いないわけないよなー」

「吹っ掛ける形で悪いんだけど告ってみたらどうよ?」


 俺の呟きに山川が乗っかってきた。


 それが出来たら苦労しないし、こんな普通かそれ以下の人間にOKなんてする訳がない。


「俺なんかみたいな平凡な人間とはどう考えても不釣り合いだろ」

「そうゆう問題かよ」

「まぁ、自分に自信なかったら意味ないしな」

 

 苦し紛れの言い訳に奥田と山川が突っ込みを入れてくる。こんな所で野球ならではのチームプレー出すんじゃねぇ!


「「まぁ、がんばれ」」


 最後は見事なほど雑な扱いで雑談は終了した。


 見かけてから数か月経って思ったこと、振られると分かっていても告白はしてみようと思っていた。


それも青春の1ページになるんじゃないかと。


 しかし、その思いは偶然にも内路が目の前に歩いてきた時に打ち砕かれる。


「美希のイケメン彼氏って今年の文化祭に来るの?」

「あー、来たいとは言ってたね、イケメンなの彼?」

「出た、のろけかよ!美男美女じゃん!」

「そう?」

「どう見てもイケメンじゃんよ。ちゃんと見てみたいから絶対連れてきてよ」

「分かったわよ、ただ彼の予定もあるからね」

「そこは、彼女の力でよろしくね」

「はいはい……」


 彼女とその友達の話を聞いてしまった俺は授業を受ける気が無くなり保健室へと向かい逃げ込んだ。


 その時は、まるで嫌なものを見たかと思わせる感じすらした。


 保健室とは本来なら、けが人や病人が休む場所なのだがこの学校の保健の先生がめちゃくちゃ美人なのだ。


 なので、俺のように逃げ込んでくる男女問わずいる中、俺もそれなりにご利用していた。


 ご利用は計画的にじゃないけど、行き過ぎると出禁されかねないので一応、控えめのつもりで利用している。


 吉川先生。美人というか可愛さも兼ね備えている学校一の女神様のようにも見える。


っていうか女神だわ。


 その為、まれに保健室が満員なってることがあるが俺も先生の顔を見に来たのと逃げ込むために来たのだ。


 そんな吉川先生は俺にこう言った。


「あら、志村君また腹痛?」


 俺は、逃げ込むときは大概腹痛を理由にしていたので今回もそうだと思ったのだろう。


 行っても高確率で湯たんぽもらって教室に返される。


 そりゃそうだよね、授業優先ですから。


さぼりはダメだもんね。


「いえ、珍しく頭痛がひどくて……少しでいいので休ませてもらえませんか?」

「いいけど、ベッドは空いてないからソファーになるけどいいかしら?」

「大丈夫です」


 俺は、弱気な返事で答えた。ほぼライフが無いのでその答え方になるのか仕方ない。


 すると、先生がこちらに向かってきた。


「頭痛そんなにひどいの?あまりにも酷いなら病院いく?」

「いえ、そこまでしなくても大丈夫だと思います」

「もしかして、なにか嫌なことであった?」

「なんでもないです、少ししたら戻りますので。ちょっとだけ」

「別に本当に調子悪いなら良くなるまでいなさい」


 こうゆう時の吉川先生は本当に女神様って思える。


 流石に気になる子が彼氏がいて、告白前に玉砕したなんて口が裂けても言えることじゃなかった。


 女性同士なら話せるのだろうけど、こればかりは誰にも話す気にはならなかった。


 多分、こうなったのはきっと少し前に、中田達と話していた『彼女』っていうフレーズがこびりついていたのだろうな。


 別に中田達が悪いんじゃない。

 

 そもそも、あんな容姿端麗な子に彼氏なんていない訳がないのだ。


 彼女の友達が言うように美人にはイケメンがつく。それは道理に近い。


 しかし、世の中は不思議なもので彼女とはとあることがきっかけで仲良くなり、いい友人になるなんてこの時は思いもしなかったし、その後も色々と接点が出来ることを知るのだった。


『一瞬、歯車が止まったように思えた。でも、歯車は止まるどころか加速を促すようなそんな感じがしていた』





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