旧友との再会と新たな友人

 2年の半分が過ぎ、半年も過ぎれば色々なイベントが発生するのはどの学校でも当たり前である。


 うちの学校の場合は、体育祭、マラソン大会、文化祭などごく普通の行事。


 さらに、学校内においてはもう一つ行事というか、ある決め事が発生するのはこれもどの学校では当たり前。


 その決め事というのが……


 ある日のHRで担任から発せられた言葉が始まりである。


「えー、来月に生徒会選挙があるんだけど、うちのクラスから出てみたいって人はいるかしら?」


 担任の田畑先生は半分、いやクラスの人材を考えたらいないだろうという顔で言っていた。


 まぁ、このクラスでやりたいっていう人はいないよな……絶対に。


 なんて、ふと思っていたら1人の手が挙がった。


「俺、やってみたいです。なんか面白そうなんで」

「え、鍵山くんが?」


 生徒に対していう言葉かって思ったけど、そう思うのも当然だと一瞬思った。


 鍵山秀一という男は、堅苦しい生徒会とはかけ離れたチャラい恰好していて、生徒会に興味ありませんって言いそうな感じの男だったのだ。


 こいつも面白い男でよく話もする仲のいい1人である。たまに煩くてめんどくさいけど。


「ほんとにやるの?手前になって出ませんとかやめてよ……」

「大丈夫です、生徒会やってみたいです」


 鍵山に即答で返されたので、先生も諦めたのか『わかりました』と了承した。


 鍵山は、そのあと同じクラスのこれまたイケメンの金田といじりキャラの松木にも声をかけた結果、3人で選挙に出ることになったようだ。


 金田恵。名前だけで見れば女子に見えるがしっかり男で、しかも本当にイケメンで軽音楽部に所属している。個人的な印象からギターかベースかと思ったら、ドラムで普段の惠とは別人に見えたのだ。


 実際、3人中1人は確定のような流れである。


当然だがクラスのみんなの反応は言えば?


「せんせー、ドンマイ。言わなきゃいいのに」


 など同情?の声がちらほらと聞こえると。


 「うるせー。絶対に当選してやる」

 「俺はどっちでもいいや。まぁ、当選しないことを祈るよ」

 「俺も」


 3人が無駄に吠えていて、俺から見れば祈ってる奴が簡単に当選するのが目に見えてるんだがな。


 声もかけられなかったので、自分はどうせ関係ないかと思い静観していたが、声を掛けられても困るので……


 しかし、この3人がまさかの当選してしまうことによって、俺の日常が更に変化するなんて予想すらしてなかった。


しかも、斜め上に……


 3人が生徒会に当選してる時点でもう天変地異なのにその後、自分も関わってしまうなんてもうこれは。


 俗に言う、青天の霹靂でしかなかった。


 因みに、選挙の結果、鍵山が生徒会長・金田が副会長・松木が書記に収まった。


 収まったのか?会長と副会長が反対のような気がするんだが……


 残りの学校生活がカオスにならないことを願いばかりである。


「お前らが生徒会か。世も末だな」


 俺は、3人(主に2人)に言ってみた。


「まさか、当選するとは思わなくてさ俺もびっくりだわ」

「俺も当選するなんて思ってなかったよ」

「いや、お前は完全にマスコットのいじられキャラ要員だろ」

「「「それな」」」

「おい」


 4人のアホな会話が教室内に響き渡るのであった。


 彼らが役員になって数日が経つと、彼らが忙しい?所為か自分が少しだけ取り残された感じになっていたが、それは仕方のないことで気にすることは無い。


 だからといって、友達がいなくなった訳じゃない。


 この時の俺は、1年の時に偶然にも小学校の時の友達と再会を果たしていた。


 そいつの名は中田誠。ちょい褐色が入った元気な奴である。昔からサッカーの才能に溢れ、この学校でもサッカー部していた。


 中田は知る由もないが、俺が憧れていた身近な存在が中田なのだ。


 それと、後ほど中田とこの学校で本気でやり合えるなんて、この時は想像すらしてなかった。


「おーい、志村」

「お、どうした中田」

「ほら、お前のクラスの奴ら役員になってからお前と絡んでないじゃん?」

「それは仕方ないだろう?それがあいつらの仕事なんだから。それよりも最近、プレーの調子はどうなのよ?」

「まぁ、ぼちぼちってところかな?っていうか暇なら部活は入れよ」


 廊下でサッカー話に夢中になっていて、会うたびにこうして部活に勧誘されるのだ。


部活が嫌な訳じゃなくて、学校に慣れたいって言うのがあるのも事実なのだから。


 その理由は、後々判明するが今伏せるとしよう。


「俺は、上手くもないし協調性がないから部活は向かないな。出来るなら今は好きなようにサッカーしたい」

「じゃ、今もあの人達とサッカーしてるのか?」

「ああ、今じゃ家にも遊びに来る仲になってるよ」

「十分すぎるほどに協調性あるじゃねぇか!」


 中田は声あげ、そんな声出す中田に俺はこう言っておいた。


「もし、本当に部がやばかったり、手助けが必要なら声かけてくれ。出来る限り手伝うから」

「本当か?」

「ああ、出来ればそんな機会は訪れてほしくはないがな」


 今は昼休みでまだ時間があった。


「どっかに行く予定だったんじゃないか?」


 俺は、向かってくる中田に呼び止められたので向かう先は2年1組だろう。


「ああ、1組に野球部のやつがいて仲良くなってさちょい顔出しに行こうかなって思ってさ」

「そーか」

「お前も来るか?」

「いいのなら行くぞ?」

「いいも悪いも友達に会いに行くのに友達を紹介するのは普通だろ」

「すまんな、小・中の名残りで」


 そんな話しながら、1組の教室にお邪魔した。


 この教室には多大なお世話とご迷惑をおかけするとは、この時点で誰が予想できただろうか?


 因みに、そうなるのは1年後のことである。


「おーい、翔・洋太」

「誠じゃん、どうしたん?」

「いや、暇だから遊びに来たのと友達を紹介しに来た」

「サッカー部?」

「いや、帰宅部だが小学校の頃の友達でここで再会したんだよ」

「初めまして、志村です。中田とは小学校で一緒にサッカーをしてまして」


 自分の簡単な自己紹介を終えると2人も自己紹介してくれた。


「俺は山川翔。よろしくな志村」

「俺は奥田洋太だ。よろしく志村」

「こちらこそよろしく」


 握手まではしなかったがちょっと話しただけも楽しいと思える人達だった。


 奥田洋太、こいつとはこれを機に親友と言っても差し支えない存在になるなんて思ってもみなかった。


 こいつがいなかったら俺は………


「これからぼちぼち絡んでいこうぜ」

「そうだな」


 野球も少しはかじっているので、俺は2人にコミュニケーションの一環としてキャッチボールをすることにした。


 まぁ、聞くことなんてありきたりだけど。


「2人は、どこのポジションなんだ?」

「俺は、キャッチャーだ。中学と高校だと色々違うから大変だわ」

「俺は、セカンドだ。ボールが硬球だからライナーに一瞬だけビビるわ」

「パスボールとか変化球とか取るのに俺も苦労したな」

「志村、野球もやったのか?サッカーじゃなくて?」

「いや、野球は中学の時にクラスメートが野球部でその練習でキャッチャーをやったんだ。防具がないからパスボールが怖くてさ」

「防具なしでキャッチャーする奴、普通いないけどな。ある意味凄いわ」


 そう、基本的にはすべてそのままの状態でプレー等するもんだから最初は驚かれる。ちなみにサッカーも同様で基本私服でしてるもんだから、ジーパンの下が酷いことになっているのはしばし。


「いや、サッカーも私服だからさ」

「サッカーもかよ!そういえば、あいつ等が志村だけサッカーじゃない格好してるって言ってたけどそうゆうことか」


 なんか、中学でやってたことが初めて役に立った気がした。


 中田が不思議そうな顔をして俺に問いかけてきた。


「志村は、球技は強いってことなのか?」

「そうだな、小学校でサッカーする前はバスケだったしな、ただ野球はある程度しか理解できていない。強いとは思ってない、あくまで平均かな」

「お前、球技大会は重宝されそうだな。それで彼女とかできたらいいな」

「そんなことで彼女が出来たら苦労はしないわ。それにこの学校の連中って何気に身体能力高いんだよな。それに目立つつもりもない」


 俺は、また2人呑気に会話が出来る仲間が増えたことに喜びを密かに感じていた。


 そして、昼休み終了のチャイムが鳴り、俺と中田が教室から出ようとした時に俺はある女子生徒に目が向いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る