STAGE3「何でそこだけゲーム仕様なんだー!!!!」

「失礼します」

「失礼しまーす!」


男性と女性の声だ。

2人の声が重なるようにそう聞こえたのと同時に、自分の部屋の扉が開かれた。


「………え」


目の前の見知らぬ男とは比べものにならないほど、思って以上にしっかりとした見た目の2人が入ってきた。

しっかりしたというか、何というか…端的に言ってしまおう。自分好みなタイプの2人が、部屋に入ってきたのだ。


「初めまして、"ユア"さん。今日から貴方をサポートする者です。宜しくお願いします」


最初に挨拶してきたのは、見た目が20代くらいの男性の方。

白髪のショートで、目は垂れ目に見えるのにキリッとしていて、顔立ちがとても整っている。いわゆるイケメンというやつだ。スタイルもとても良い。おまけにスーツを着ているが、スーツに着られている感が全くない。それほどにとても似合っていた。見た目通り、言葉遣いも礼儀正しい。


「初めまして"ゆあ"さん!同じく、今日から貴方をサポートする者です!よろしくおねがいしまーす!」


次に挨拶してきたのは、見た目が10代後半くらいに見える女性の方。

黒髪のロングで、目はパッチリとしていて可愛らしい顔をしている。童顔、というやつだろうか。さっきのイケメンに負けないほどの美女だ。おまけに胸がデカい。スタイルも良い。こちらは制服を着ているが、それもよく似合っている。言葉遣いは少し砕けた感じだが、明るい感じがして良い。




と、そこまで冷静に2人を分析し終えたところで、ある事に気がつく。


「あの、さっきから自分に向かって"ゆあさん"って呼ばれてる気がするんですけど…?」


「?貴方のお名前は、"ユア・ネーム"さんだとお聞きしておりますが?」


「ユアネーム!?何それ!?そんな名前じゃないよ!?何でそんなデフォルト名みたいな名前になってるの!?」


「えー?だっておまえさん、アンケートで自分でそう書いてたろうが。プレイヤーになった時の名前は『ユア・ネーム』がいいって」


「はあ!?そんなのいつ………」


アンケート。

その言葉で、思い出した事があった。




つい先日、自分の仕事の副業として、遊び感覚でやっているアンケート調査という仕事で、「ゲームに関するアンケート」に回答したのだ。

それが何だか、いつものアンケート内容とは少し違っていた気がしたのだが…自分の好きな物(アニメやゲームやそういった類のもの)についてだったから、そんな事気にも留めずに、めちゃくちゃ楽しんで回答した記憶がある。

確かにその時、「もし自分がプレイヤーになったとしたら、どんな名前にしますか?」といった感じの内容があった気がする。

特に名前は思いつかなかったから、デフォルトで設定されていた「ユア・ネーム」を、そのまま回答欄にいれたような…。




「あのアンケートか…!!」


まさか、あのアンケートに回答したから、こんな状況になっているのか…!?

なんてことだ…それならもっとマシな名前に…というか何なら自分の名前にしたのに…!!


「思い出したか。そうそうそれそれ。ほれ、この2人も、おまえさんの要望通りだろ?」


そこまで言われて更に合点がいく。

自分の目の前に現れたこの2人の男女…見た目が自分好みになっているわけだ。

何故ならこの2人の見た目も、そのアンケートの「好きなキャラクター像を自由に書いてね!」の項目に書いた内容と、ピッタリ一致しているのだ。


「ああ…名前の設定ミスですか…まあ、よくある事ですよ(イケボ)」


「そうそう!気にしない気にしなーい!(カワボ)」


よくよく聞いたら、声まで要望通りじゃないか…!!なんてことだ…!!自分の名前をきちんと設定していたら、この理想の男女から、自分の名前を呼ばれたというのに…!!!!


「いや、確かに、この2人はほんと、要望通りというか、自分の好みどストライクですけど…あの、名前だけ…何とかなりませんか…?ほら、神様特権?とかで………」


「なーに言ってんだおまえさん。ゲームにおいて、1度設定した名前は変えられないもんだろ?」


何でそこだけゲーム仕様なんだー!!!!

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突然ですが、ゲーム世界のキャラ達から命を狙われることになりました。 黒野さつき @kurotsuki

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