第29話VSオークキング
水球を弾き飛ばしたオークキングは、怒りに染まった表情で戦斧を振り回す。
その威力は森の木を1撃でなぎ倒すほど。まともにくらったら間違いなく即死だ。
顔面ギリギリを通り過ぎる戦斧を躱すたびに寿命が減る思いがする。が、何度か繰り返しているうちにあることに気が付いた。
オークキングの攻撃を躱せている。
最初はオレ達を舐めてかかったり弄んだりしているのかと思ったがどうやらそういうわけじゃないらしい。
攻撃が直線的なんだ。
オークは豚と猪の中間のような見た目で2足歩行する魔物だ。
猪突猛進という言葉がオレの頭に浮かぶ。
さっきまでいた通常種のオークとハイオークは瞬殺してしまったから確認はできないけど、これがオークの種族特性だとしたら?
やりようによっては勝てるかもしれない。もちろんまともに遣り合っては絶対に勝てない。今は紙一重のところでなんとか避け続けているけど、体力はどう見てもオークキングのほうが上。いずれやつの戦斧がオレの頭をかち割るだろう。それも、そう時間はかからずに。
となると、勝負に出るのも急がないといけないか。
「ミリゼット! 少しでいい、こいつの注意を引き付けて逃げ回ってくれないか?」
現状3対1でオレたちが押されている状況でさらに自身に敵の注意を引き付けるという行為は危険極まりない。
それでも、メルルよりかは遥かに野生の勘が働き、冒険者としての場数を踏んでいるミリゼットに頼むしかないんだ。
「喰らえオークキングめ!」
詳しい説明をしていないにも関わらず、ハイオークが手にしていた槍を拾って投げつけるミリゼット。
槍はオークキングの鎧のような筋肉の阻まれてダメージを与えてはいないが、攻撃されたということは認識したんだろう。
ミリゼットに向け咆哮をあげると一直線に追い回しはじめた。
追われるミリゼットはさすがダークエルフというべきか、森と木という地形をうまく使って攻撃を躱し続ける。
が、やはりさすがオークキングというべきか、戦斧が次々と木を倒し、ミリゼットの優位はどんどん無くなっていく。
迫る戦斧をミリゼットが躱し、距離を取り、オークキングが再び突進をはじめる。
今までと同じパターン。ここだ!
「【ディグダグ】!」
オークキングの目の前の地面に土魔法で大きな落とし穴を掘る。
ミリゼットという上物の獲物しか目に入っていなかったオークキングは真っ逆さまに落ちていった。
「ヒカリさん!」
「ヒカリ殿!」
メルルとミリゼットが駆け寄って穴をのぞく。
「悪かったなミリゼット。危ない役を押し付けて」
「いや、気にするな。この中ではわたしが最適なのは間違いないからな。しかし、どうする気だ? このまま埋めたところでいずれ出てくるぞ。 オークキングの体力は普通じゃないんだ」
「ああ。だからこうする。【ジャッジメントボルト】!!」
穴の中に、得意の雷魔法を手加減無しで打ち込む。
その威力はドラゴンなクエストならギガデ○ン、終わりの無さそうな幻想のゲームならサ○ダガに匹敵しそうなほどだ。
さすがに動き回っている敵に当てられるほど魔法に慣れてはいないから落とし穴に落とすという作戦をとったのだ。
落雷による土煙が晴れて穴を覗くと、オークキングだったものは真っ黒な炭に成り果てていた。
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