Turn276.姫『強敵の末路』
「彼が、勇者様に危害を加えていた魔物ですか?」
城にまで連行されたグラハムは、そのまま地下牢に幽閉されていた。
グラハムの姿を鉄格子越しに見たお姫様が呟く。
弱々しく体をガタガタと震わせているグラハム──。とても勇者を窮地に追いやる存在であったようには思えない。
ブツブツと、何事かを呟いていた──。
「勇者に手を出しては駄目だったでやんす……駄目でやんす……駄目でやんす……」
うわ言のようにグラハムは何度も呟いていた。
側に居たニュウは、お姫様に頷いてみせた。
「ええ、間違いはないでしょう。神様からの啓示にも、勇者様を襲う災いは晴れたと出ていますから」
どうやらグラハムを捕えたことで、異世界の勇者を救うことができたようだ。
「勇者は……勇者は……」
ガタガタと恐怖に体を震わせるグラハムは完全に自我を失っていた。
恐らく、自分が人間たちに捕らわれここに連れて来られたことも──お姫様たちに見られていることも──グラハムには分かっていないのだろう。
「本当はとどめを刺しても良かったんだがね」
アルギバーが肩を竦める。
ところがそれをしなかったのは、アルギバーの情けか優しさか──いくら魔族とて戦意のない者を手に掛ける程、アルギバーも落ちぶれてはいなかった。
「魔王のことについて……勇者様のことについて……このお方には、色々と聞かねばなりませんね」
お姫様はグラハムの背中を険しい表情で睨んだ。
──勇者を襲う異世界の刺客は、異世界の住人たちの活躍によって退けることができた。
現実の勇者を脅威に陥れた異世界の敵との攻防は、こうして幕を閉じるのであった。
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