Turn275.勇者『後は警察に任せよう』

「とんだ事態になっちゃったわね……」

 パトカーに連行されていく松葉の背中を見送りながら聖愛は染み染みと呟く。

 息抜きという意味で紫亜から誘われ軽い気持ちで来たはずなのに、逆に酷く疲労が溜まってしまった。


「……でも、まぁ。みんなが無事でよかったよ」

 この場の誰も怪我を負うことなく、聖愛のストーカー事件を解決することが出来た。

「ありがとうね。守ってくれてカッコ良かったわよ」

 フフと、聖愛が笑いながら感謝の言葉を述べてくれる。

「いや、当然のことをしたまでさ」

 僕は頷いたものだ。



 ◆◆◆



「それじゃあ、私は警察の人に話をしてくるわね」

「そうだね。じゃあ、僕らも解散しようか」

 聖愛は行かねばならないので、僕と紫亜だけになってしまう。お開きのムードとなった。


 ところが──。

「えー」

 まだ元気の有り余っている紫亜は不服そうだった。

「もうちょっと遊んでいきましょうよー」

 こんなことがあった直後であるから、僕もこれ以上は遊ぶ気にはなれなかった。

「いや、帰ろうよ……」

 呆れたように目を細めると、紫亜がこんなことを言い出した。

「じゃあ、さぁ……。帰るか帰らないか、勝負で決めましょうよ」


「さようなら。今日はありがとうね」

 呑気な紫亜を無視して僕と聖愛は手を取り合い、さっさと決戦場となったアミューズメント施設を後にしたのであった──。

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