Chapter00【魔王様の憂鬱】

Episode001.魔王『魔王の脅威』

 魔界の王である魔王は、配下の魔族やモンスターを従え、魔界からこの世界を支配しにやって来た。

 魔王の持つ強大な力の前に人間たちは成すすべもなく、その力に恐怖し、怯えるばかりであった。


 魔王が人間界を手中におさめるのも時間の問題であろう──。


 そう勘繰っていた魔王であったが、突如その耳に訃報が舞い込んだ──。

 各地に派遣していたモンスターたちが、次々に何者かによって倒されているらしい。

 弱小な人間たちの中に現れた、魔王にとって唯一の脅威──『勇者』なる存在。


「あり得るのか、そんなことが……」

 魔王は冷や汗を掻いたものである。

 時間の問題とも思えた人間界制圧であったが『勇者』の存在によって、途端に暗雲が立ち込めてしまう。

 魔界の中でも随一の力を持つモンスターたちを、勇者は簡単に薙ぎ払っていったのである。

──さらに勇者は戦いの中で成長していき、メキメキと力をつけていっているようである。そんな勇者に、魔王は焦りを感じていた。


「魔王様、如何致しましょうか?」

 魔王軍幹部の一人である魔導師ペデロペが、魔王に助言を乞うように尋ねた。勇者の噂は他の者たちにも広がり、魔王同様に脅威に感じていた。


 配下に古文書を調べさせた魔王は──とある伝承を耳にする。

『魔族の侵攻に唯一の脅威となる存在──勇者。勇者に我々は決して敵うことは出来ない』

 かつて、人間界に侵攻を企てた先代の魔王の手記である。その時も、人間界制圧は叶わなかったのである。

 全ては、勇者の手によって阻止されてしまった。

「そんな奴を野放しになどしておれん!」

 魔王は決断を下した。

 その様に脅威となる存在は、今すぐにでも排除しなければならない──。

 魔王は自ら腰を上げ、勇者の元に向かうのであった。

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