Turn253.勇者『不戦勝でも罰ゲーム執行』
係員の人がやって来て機械のチェックをしてくれたが、どうにも故障の原因が分からないらしい。
「申し訳ありませんが、料金の方は返却させて頂きますので……」
ペコリと頭を下げられ、支払った硬貨を返された。
すぐに直るような事態ではないらしく、『メンテナンス中』の札がネットに掲げられた。
「まぁ、仕方がないわね。機械の故障だもの」
紫亜がフォローを入れてくれるが、僕の表情は浮かなかった。
またあの変な感覚や声と共に、不可解な現象が身の回りで起こったのだ。これはもう単なる偶然という言葉では済ませられないだろう。
「……罰ゲーム……」
考え込んでいた僕に、松葉が声を掛けてきた。
「……君の負けだ。罰ゲーム……忘れてないだろうね……?」
「それはあんまりじゃないかしら」
さすがに機械の不調で中断してしまったのだから勝敗をつけることは難しいと、聖愛が僕の味方をしてくれた。
不可抗力で不戦勝となってしまったのだから僕には罪がないはずなのだが、松葉は腑に落ちない様子で口を尖らせている。
「いいよ、ありがとう。次のゲーム代くらい僕が払うよ」
松葉に借りを作りたくないという意味もあり、僕は罰ゲームを受けることにした。
すると、松葉は満足そうにニヤリと笑った。
「……そうだよ。罰ゲームから逃げちゃいけないよ。次の罰ゲームも、きちんと受けてもらわないとね……」
「逃げる気なんてないさ」
正々堂々と挑もうとする僕を見て、松葉は口元を歪めた。
「……今のは君に罰ゲームを決めてもらったから、今度は僕が罰ゲームを決めるね……」
そこまで大きな声で言っていた松葉だが、途端に声を潜めて僕にゆっくりと近付いてきた。
「……彼女に二度と近付くなよ……」
聖愛の前から去れ──そういう条件を──罰ゲームを次の勝負で、松葉は僕に突き付けてきたのであった。
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