Turn182.剣聖『骨笛の音色』

「六星斬撃波っ!」

 アルギバーが放った剣撃により、スケルトンキングの全身の骨が切断される。

「ぐへぇ……!」

 悲鳴を上げながら床に崩れ落ちるスケルトンキングに向かって、テラが追い打ちの魔法を放つ。

「シャイニングインフェルノ!」

 光の球体を手から放ち、スケルトンキングにぶつける。

「ぐぁあぁああっ!」

 聖なる光に触れたスケルトンキングの体は浄化され、塵と化していく──。

 そんな調子で一方的な戦いが繰り広げられる。

 手足が消え、胴体が消え──ついには、残されたスケルトンキングは頭部の一部のみとなってしまう。

『これで勝ったと思うなよ……人間よ……』

 忌々しげに吐き捨てるスケルトンにトドメを指すべく、テラが火炎魔法を放つ。

『ぎぃぃいやぁあぁあああっ!』

 炎に包まれたスケルトンキングの頭部は真っ黒焦げの灰となり、生気を失ってしまった。

 不死族の長であるスケルトンキングの最期は実に呆気ないものであった。


 すべてが終わり、ニュウは息を吐いた。

「やったわ!」

 ホッとするニュウにテラが抱き着く。

「やったわね!」

──微笑ましい光景であった。

 体内の毒が緩和され、立ち上がったお姫様が三人の英雄に頭を下げる。

「ありがとうございます、皆様。お陰で、全滅の危機から逃れることができました」

「まぁ、まだ不死族の軍勢に取り囲まれているからおちおちしていられないがな……」

 アルギバーが壁の穴から外を見詰める。

 さらに増員された不死身の軍勢がひしめき合い、唸り声を上げていた。

 なんにせよ、司令塔であるスケルトンキングを倒せたことは大きい。後は、不死身の軍勢をどう倒していけば良いのか、考えるだけである──。


「ワンッ!」

 柴犬がそれまで口にしていた角笛を地面に下ろす。

──コロンッ。

 その拍子に、何かが一緒に足元に落ちた。

 白いその何かは──指の骨であろうか。

 思わず、ニュウの顔が引き攣る。

「それは……!?」

 気付いた時には遅かった。

──残された指の骨に大気中の骨粉が集まり、歪な顎を形成する。ガチャガチャと、感覚を確かめるように歯を噛み鳴らした顎は、そのまま角笛へと噛み付いた。


──ブオゥウ、ウォォォオオオッ!


 角笛の音が、周囲に轟いた──。


「ダークネスバーン!」

 ニュウが魔法を放つ。

 放たれた暗黒の気砲によって、スケルトンキングの残骸は今度こそ完全に吹き飛んだ。


──アァアァアアァアア!


 砦の外で歓声が上がった。

 合図を受けた五百万の不死族の軍勢が大地を踏み鳴らし、籠城した人間たちにトドメを指すべく一気に雪崩込んできたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る