Turn167.勇者『店内満喫』
文房具屋の店内をぐるりと見て回り満足した僕は、店を出ようと出口に向かった。
自動ドアの前に立つが──足を止めてしまう。
どうにも、外に出る気が起きなかった。
視線を動かすと出口の横に設置されたオススメコーナーが目に止まった。自然とそちらに体を避けて、自動ドアから意識を遠ざけていた。
棚にはスケジュール帳が並んでいた。
「日記でもつけようかな……」
ふとそんな考えが頭に浮かんだ。いや──と、僕は首を振るった。
どうせ長続きしないんだ。毎日、出来事を綴っていくのなんて面倒である。日々、色々なことが起こるわけでもない。
そうした時に書くことが思い浮かばず白紙となり──やがて、書かなくなるだろう。
じゃあ──と、次に頭の中に浮かんだのはシール貼りである。シールも種類が様々あるのだから、わざわざ日記を書かず今日やったことに関連したシールを貼り付ければ良いのではないか。
それくらいなら手間にならないだろうし、後々見返した時に汚い字よりかは見やすいかもしれない。
そう思って、店内の奥へと移動する。
──いや、何を考えているんだ。僕は……。
自分自身の考えに呆れたものである。
さっさとプレゼントを買いに、目的の店へと向かいたいところである。
「まぁ、シールなんてすぐに選べるだろうし……ついでだから見ていくか……」
なぜだかそう思い直し、僕は棚に並んだシールに視線を向けたのだった。
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