Turn166.書士『偽造書類作成』
ブラックシャドウナイトとピピリの押し問答は続いていた。ピピリの分が悪く、険悪なムードが漂っていた。
ブラックシャドウナイトはピピリを怪しみ、今にも飛び掛かってきそうな勢いである。
「はて……?」
──ところが不思議なことが起こり、カイは首を傾げたものだ。いつの間にかブラックシャドウナイトの動きが止まっていた。
──それだけではない。ピピリやお姫様はおろか、カイ以外の周りの全ての時間が止まっていたのである。
それは異様な光景であった。
自分以外の全てが静止し、音を発するものが何もなくなっている。
そんな不気味な空間に送り込まれたことをカイは──プラスに捉えていた。
「これで思考を妨げるものがなく、作業に集中することができるようになったわけじゃな……」
カイはそう考え、偽の通行証を作るために動き出すことにする。
試しにブラックシャドウナイトの手から本物の許可書を奪い取ろうとしたが、ガッチリと握られていて指の間から外すことはできなかった。
それが可能であれば、わざわざ偽造などする必要はないのだが──。
こうなっては仕方がない。
──ならば、カイにできることは一つである。
「勇者様から授かった折角のチャンスじゃ。きちんと、役目をまっとうせんとなぁ……」
カイは肩がけのバッグを地面に下ろすと、中から紙の束を取り出した。
それぞれ違う材質をした紙の束から、許可書の材質と同じ物を探していく──。
それが終われば、今度はペンのインクと同じものはどれか──など吟味していく。
記憶を頼りに、長い時間を掛けてブラックシャドウナイトが手にした許可書の複製を作り上げるべく、カイは紙にインクを走らせるのであった。
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