Turn143.勇者『遅い目覚め』

「良かった……。目を覚したのね……」

 僕が目を開くと、目の前に聖愛の顔があった。

 どこかの病院の病室だろうか。僕が目を覚ますのを、聖愛は見守ってくれていたらしい。

「随分とお寝坊だったけど、気分はどう?」

 聖愛に尋ねられた僕は窓の外に視線を送った。

 アレは──異世界での出来事は全て夢だったのだろうか──。

 その真偽は分からない。

 しかし、種族を越えた協力があったからこそ、強靭な力を持つ刺客にも打ち勝つことができたのは事実である。

 僕は頷いた。

「ああ、とてもいい気分だよ。……願わくば、もう少し寝ていたかったところさ」

「それは勘弁して欲しいわね」

 僕らは笑った──。

 不知火や紫亜にもどうやら迷惑を掛けたようだ。

 僕のことを心配して協力してくれた彼女らは、掛け替えのない友人たちである。


 異世界での、その後の行く末も見届けたかったところではあるが、今はここが僕の本当の居場所である。

「ただいま」

「おかえりなさい」

 僕が呟くと、聖愛が言葉を返してくれた。

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