Turn45.異世界の少女『すれ違う狂人』

「これはいったい、どういうことだ?」

 遠くから声が聞こえた。

 ねっとりとした、嫌悪感を抱く声──テラをここに閉じ込めた張本人、レイリーのものである。


 テラは後退った。

──しかし、光の道はこの先を示している。他にルートがあるのかは分からないが、地上に向かうにはこの先に進まなければならない。

 かと言って、そこは一本道なのでやり過ごせそうな場所はなかった。しばらく戻れば分岐路まで行けるだろうが、テラの足取りではすぐさま追い付かれてしまう。


 このままでは鉢合わせをしてしまう──。

 窮地に追いやられたテラの耳に、救いの勇者の声が響く。

『フグビカ・トンプレン・ゲノティーノノディー』

「フグビカ・トンプレン・ゲノティーノノディー」

 例の如く、すかさずテラはその言葉を呟いた。

 たちまち呪文が発動する。テラの体がみるみる透けていき、周囲に擬態していく。

──透明化の呪文だ。


 そして遂には、完全にテラの姿はその場から消え失せてしまう。透明化の呪文によって、テラの姿は掻き消えた。


「侵入者などあり得ない。どういうこだぁ?」

 レイリーは発動してスクラップと化した罠群を見て、頻りに首を傾げていた。

 しかし、ある結論に達したらしい──。

「まさか、テラの奴が……て、テラァアアアッ!」

 テラが脱走した可能性に勘付いたレイリーはすかさず走り出した。


 透明化したテラは道の端でビクビクしながら小さくなっていた。


 レイリーはテラの存在には気が付いていないようで

 テラの脇を通り過ぎると猛ダッシュで牢屋へと向かって行った。


 ホッと胸を撫で下ろしたテラは立ち上がり、そして地上を目指して歩き始めた。

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