Turn39.謎の男『ご報告』

 砂嵐が吹き荒れる中、男が洞穴の中に入り込んだ。

 洞穴の中に入ると男はフードを脱ぎ、毒づいた。

「外に出るたびにイチイチこれじゃあ、溜まったものじゃないのね。せっかく新調したコートなのにさぁ」

 フンと鼻を鳴らしたその男は、横に幅広いピピリ・ガーデンという男である。

 ピピリは荷物を下ろすと、椅子にドカリと腰掛けた。そして、テーブルに置かれた宝石に向かって話し掛ける。

「あー、あー。聞こえますかねー。どうぞー」


──キコ……テ……ド……。


 吹き荒れる砂嵐のせいか、相手の声がぶつ切りにしか聞こえない。

 ピピリは口を尖らせて、ポンポンと宝石を叩く。

「要人を見つけましたのね。すぐに、お城にお連れしますから、お待ち下さいなのね」


──ソ……ワカ……シロ……。


 相変わらず、通信の相手が何を言っているのか一言も聞き取れず、ピピリは溜め息を吐いた。

「まぁ、ご安心下さいね。多少手荒な真似をしても、必ずや貴方様の元に、あのお方をお連れしますのね……」

 そう言いつつ、ピピリは怪しく口元を歪めた。


「今晩、この地は戦場となるでしょう。任務は確実にやり遂げてみせますので、安心してお待ち下さいなのね」

 クックッとピピリは笑い、舌なめずりをするのであった。

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