Turn36.狂人『雑魚い仲介人』
「それくらいにしておくのね……」
不意に声が掛かり、レイリーはハッとなった。
振り向くとまだ客席に人影があった。確かにこの部屋からは全員を出したはずである。それなのに──恰幅の良い男ピピリ・ガーデンだけはそこに居た。
「それ以上やると、死んでしまうのね……」
「お前は……」
レイリーが忌々しげな目で、ピピリを見詰める。
「その娘は、こちらに引き渡してもらうのね。魔王城の、魔王様の元にお連れするのね」
途端に、レイリーの表情が険しくなった。
「やはり、貴様は魔王様の……!」
レイリーは唇を噛み、臨戦態勢に入った。
「テラは……彼女は渡しはしない! 彼女は私の物だ! どこにも行かせはしないぞ!」
興奮状態に陥ったレイリーはピピリを突き飛ばした。
「うわぁっ!?」
意外にも、ピピリはあっさりと後方に倒れてしまう。
この隙にと、ピピリはテラを抱き抱え、部屋の奥へと走って行った。人一人担いでいる割には、人間離れした体力であった。
壁の窪みに手を翳すと、秘密扉が開き、テラを抱えたレイリーはその中へと滑り込んだのだった。
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