Turn015.勇者『事情聴取』
──助けてくれ!
心の中で僕は叫んでいた。
何故って、衝動的に自分でも分けのわからない行動に出てしまった為、こうして生徒指導室に閉じ込められてしまったからである。
オマケに、向かいのソファーには生徒指導の池谷と教頭の険しい顔が並んでいる。こちらに威圧でもするような鋭い視線を向けてきていた。
当然であるのだが、部屋の中には重苦しい空気が流れていて息が詰まった。
「黙っていても分からんぞ! なんであんな事をしたんだ!」
池谷が唾を飛ばしながら声を張り上げてきた。
これで何度目の質問であろうか。──いや、尋問に近い勢いである。僕は相変わらず口を噤んでいた。
──何故?
そう問われても、聞きたいのは僕の方である。なんであんな馬鹿みたいな行動を、衝動的にやったのであろうか。
物を投げたければ、せめて壁や人のいないところに向かって投げればいい。それなのにどうしてか、あの時はグラウンドに向かって投げればならないような気がして仕方なかった。
だから、実際にそうした訳なのだけれど──。
──でも、それが何のためだと聞かれても困る。
僕だって「分からない」と答えるしかない。
だけど、そんなことを言ったら余計に怒られるだけだろう。僕としては、黙っていることしかできなかった。
池谷が感情的に熱くなると、隣りに座っていた教頭先生が「まぁまぁ」と宥めるように言った。
「後のことは、警察に任せることにしましょうよ。こう騒ぎになっては、我々でどうこうできる問題ではありませんからね」
どうやら教頭な、僕からの弁明なんぞ一切聞く気もなく警察に通報するつもりらしい。
──まあ、仕方のないことであるのだが──。
「ふん! 悪いが、俺ももうお前を擁護してはやれんぞ」
池谷が鼻を鳴らす。彼もこれ以上、僕にどうこう言うつもりはないらしい。
──トントン!
その時である。
誰か外から扉をノックしてきた。
「はい?」
教頭が返事をすると、扉がガチャリと開いた。
そして、姿を現したのは──警察官ではない。白衣を着た男であった。
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