Turn005.勇者『収穫ゼロ』

僕のその行動に、どんな意味があったのかは分からない。でも僕は、自分自身のこの行動によって誰かを救うことができた──という不思議な達成感で清々しい気分になっていた。


理科室の中に入って、教室の中を見回す。

カーテンを開けて外の夕陽を取り入れる。

──何があるわけでもない。

「僕、何をやってるんだろう……」

ふと、我に返ると虚しくなる。

──誰もない。

──何もない。

それなのに、無理を通してわざわざこの教室に入った。それに何の意味があるのだ──?

「はぁ……」

僕は深く溜め息を吐いた。

「帰ろう……」

何をするわけでもなく、僕は苦労して入った理科室から何もせず廊下へ出た。


そもそも僕には、確たる目的があったわけではない。一応やりたいことはやって、満足感を得ることはできた。

これ以上、ここに長居をする意味はない。


理科室の鍵を締めた僕は長い廊下を、再び職員室に向かって歩き出した。

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