モンスタークレーマー幼馴染VS最強の念動力者 3
白眉の念動力を、華が金属バットで打ち返す。
そして白眉は、華の柔道技や凶器攻撃を念動力でいなす。
爆弾が爆発するかのような衝撃が、俺たちのところまで響いてくる。
「なあ鹿歩、悟、これどうしよう?」
俺は、非戦闘要員の仲間二人に向き直った。
「いや僕らに言われても困ります」
「二人をなだめられるのは彦一だけ」
が、冷ややかな視線とドライな言葉が返ってくるだけだった。
「そもそもなんなのあの人。肉体言語で念動力に対抗できるとかおかしい」
「いや……あれも超能力なんじゃないのかな。こう、なんていうか……超能力でチャクラが開いた的な」
鹿歩の質問というか詰問に、俺は苦し紛れで答えた。
「チャクラってなに」
「気功っぽいやつ」
「気功って金属バットを強化できるの」
無理だな。
念動力によるエネルギー弾を打ち返す時点で身体能力の問題ではないとは思う。
「……まだ能力の方向性が定まっていないんじゃないですか?」
首をひねる俺の横で、悟がぽつりと呟いた。
「ん? どういうことだ悟?」
「用途の限定されていないサイキックエナジーが、直近で受けた超能力を真似しているんでしょう。彼女はまだ、超能力が覚醒しかかっている段階です」
「あれで?」
俺は限界ギリギリバトルを展開する白眉と華を指さす。
白眉は、教団内部において最高峰の念動力の使い手だった。
自動車や列車程度ならば捻じ切るくらい造作もない。
その白眉に対等に戦っている華もおかしいレベルだ。
「た、多分」
「そこで自信をなくさないでくれ」
「でもあのサイキックエナジーの流れを見るに、ただの念動力です。射程距離がごくごく短いだけです。物体を強化するのは念動力の一種で、白眉さんだってできますから」
「む……」
目を凝らしてよく見る。
確かに、白眉と同じような力の流れを感じる。
体から湧き出るエネルギーを手や腕に集中させて攻撃したり、足に集中して物凄い速度で移動させたりしている。そして白眉は白眉で似たようなことをしている。湧き出た力を不可視の鎧として纏い、あるいは武器として放出している。
「白眉と似た能力……いや、違うな。確かに悟の言う通り、発展途上で学習中だな」
実は念動力とは、超能力者の多くが使える能力だ。
華の得意分野とは限らない。
加えて華は、俺の催眠能力に抵抗した。
俺は全力とは言わないまでも、手を抜いたりはしていなかったにもかかわらずだ。
「あいつは……俺から精神干渉のやり方を覚えたんだ。俺が何度となく催眠をかけてるうちに、やり方を自分のものにした。そして今、白眉の念動力も現在進行形で学習中ってわけだ」
「彦一さん、幼馴染みに何度も催眠ってどういうことですか」
「流石に引く」
悟と鹿歩が俺から後ずさる。
いや確かに女の子を何度も催眠掛けてると言われたらそういう反応になるだろうけど。
「事情があるんだよ!」
「その事情は後で聞かせてもらいます。それより流石に異常ですよ。ほぼ初見の超能力を、それも二つも真似るなんて」
「論より証拠だ。あれを見ろ」
再び俺は華を指さした。
そこで見た華は、ますます念動力に磨きがかかっていた。
◆
華は、白眉の遠距離攻撃を防ぐのに手一杯だった。
迫りくるエネルギー弾を弾き、蹴り、捌き、そして蛇のようにのたうち回るエネルギーの鞭を掴んで千切った。致命的なダメージは負っていないが、効果的な反撃に出ることもできないでいる。
だが、流れが変わりつつあった。
「うん……うん、なるほど、そうやるのね。なるほど上手いものね」
疲労困憊で肩で息をしながらも、華はそう呟く。
俺はその言葉に、背筋に冷たいものが走った。
「白眉、気をつけろ……真似てくるぞ……!」
「真似?」
華は中学時代から勉学に励んでいた。そのかわり、部活は遊び半分だった。その遊び半分ですら凄まじい記録を出している。テニス部と陸上部ともに在籍しており、気が向いたときにだけ顔を出すという体育会系にあるまじき舐めプ女だった。
そんな態度が許されたのは、金に物を言わせて黙らせたわけではない。親の七光りがあったわけでもない。ただ純粋に、周囲が納得せざるをえない実力があったからだ。
「華が人を褒めるときってのは大体決まってる。それは……」
「素晴らしい技術を教えてくれるなんてありがとう、って意味で褒めてるのよ」
華の体から放たれているサイキックエナジーの流れが変わった。
今まで暴れるがままの奔流が、華の右手に集中している。
海の大渦のように放たれたエネルギーを吸い込み、大きくなっていく。
「……ま、まさか!」
「さっきのお返しよ!」
そして一点に集中したエネルギー球を宙に浮かせた。
華は腰をひねり、右足を浮かせ、力をためる。
引き絞った弓から矢が放たれるように、豪快に金属バットで打った。
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