008 VS砲撃型・砲撃型・近接突破型
深夜十一時を過ぎた頃、都内にある金属加工工場の近くに紫夜が到着した。この金属加工工場に以前訪れたこともあり、誰にも見つからずに来ることが出来た。今回のイクスザラは、空気銃兼高周波ブレイド兼盾の《エラビレラ・アニゼコ》を左腕に、
(もしかして、もう用が済んでいなくなった?)
と、帰りたくなるところだが、
(いや、続けて前にも現れた場所にロボットが出たし・・・。これって・・・。それにまだ周囲に)
紫夜は帰らずに周囲を見渡しと、隣接する建物や工場を見て回る。もしかしたら、ここじゃないところにいるのかもと。
複数の建物や工場を見て回っている中、最初に訪れた金属加工工場の近くのガス工場からドカンと爆発音のような音が聞こえた。この工場、夜間は停止しているはず。夜間も稼働している機械の音かもしれないが、爆発音のような音はするだろうか。確認のため、紫夜は工場の敷地を囲う壁を鉤爪付きのワイヤーを使ってよじ登り、上から敷地内を見渡す。そこには大型のガスタンクや様々な設備。それに紫夜は見惚れそうになるが、その中で工場の敷地を覆う壁が崩れ、三体のロボットが敷地に侵入してくるのを見た。そのうちの一体は右腕に長い巨大な槍のようなも装備をしているが、うち二体は以前交戦した高い破壊力を持つレールガンを装備した砲撃型だ。
(あれはやっぱりレールガン装備の! あれを装備してきてるってことは、こないだみたくここの破壊が目的か? なら、止めなきゃ! ガス工場が破壊されでもしたら、敷地ないだけじゃ被害が済まないぞ!)
紫夜は壁から飛び降りて、敷地内に入ると、ロボットたちのいる方向に急いで向かう。今回背中の装備が重く、いつもより遅いスピードで走ること、体力の消耗を強いられる。彼はそれでもただとめなくてはという一心で走った。
紫夜がロボットたちのいる方へ走り出して、敷地内の角に差し掛かったあたりで、すぐそばの曲がり角からガシャンガシャンとまるで機械が歩くような音が聞こえてきた。恐らくこれはロボットの歩く音で、角の向こうに向かわずとも、すぐに曲がり角から出てくるだろう。紫夜は周囲を確認する。ここは敷地内の角で周りは工場を囲う壁一面。特に誘爆するような危険なものは見当たらない。
(ここなら大丈夫か)
紫夜はベルトのケースからあるものを取り出す。それはいくつものトリガーやスティックが備えつけらえたリモコン式のグリップ。それに備わっているトリガーうちの一つを引く。すると、背中に装備されたレールガン《ピストラ》のエンジンが音を立てて動き出す。続けて、スティックを操作して、両肩から延びる二門のレールガンの角度を調整し、照準を合わせる。
歩くような機械の音が大きくなっている。曲がり角から出てきたところを《ピストラ》でこれから狙い撃つ。
(とにかくこの武器は反動が大きい。吹っ飛ばされないように!)
そう全身に力を込めたとき、曲がり角からロボットが一体出てきた。砲撃型だ。
(一撃で仕留める!)
紫夜は右のレールガンのトリガーを引く。すると、右のレールガンからアルミニウムの砲弾が高速で発射された。しかし、それと同時に反動で紫夜は後方へ吹っ飛ばされる。吹っ飛ばされないようにしていたのに。だが、発射された弾丸はロボットに当たらず、そのまま工場の壁を破壊した。地面に叩きつけられ、うつ伏せになっていた紫夜は外したのを確認する。
(もしかして、照準に不備が? いや、風とか? それとも撃ち方が悪いとか)
そう考えていると、砲撃で紫夜の存在に気付いたロボットは彼の方を向くと、背中のバックパックから轟音を立てる。
(マズい! 撃たれる! 起き上がって避けるには間に合わない! こうなりゃ、一か八かこのまま!)
紫夜は手の中にあるグリップを操作して、うつ伏せのままレールガンの角度を調整し、そのまま二門のレールガンでロボットを砲撃した。二つの弾丸が放たれ、紫夜は再び吹っ飛ばされる。
一発はまたしても外れて壁に当たるが、もう一発の弾丸はロボットの胸部を撃ち抜き、そのまま背中のバックパックを撃ち抜いた。撃ち抜かれたロボットは力尽きたように膝をつくと、そのまま爆発した。この爆発は自爆の時よりもどこか小規模で、爆発で吹き飛んだ手足と思われるパーツが形を残して周囲に転がっている。再び吹っ飛ばされた紫夜は爆発が小さかったこともあり、地面に叩きつけられて痛みを感じた以外は無事だった。
(あっぶね~。若干ヤケに撃ったけど、何とかなってよかった・・・)
安堵した紫夜は立ち上がると、他のロボットを探しに再び走り出す。
(このレールガン、反動のこともだけど、まだちゃんと運用するには不十分だな。今回はもう出来るだけ使わないようにしておこう)
紫夜は残りの二体目、三体目のロボットを探すため、工場の敷地内を走り回る。敷地内は広く、建物やタンクがあちこちに配置され迷路のようだった。そのため、時々行き止まりに出会い、スムーズに移動できない紫夜は苛立ちを覚え始めていた。
(ダメだ。落ち着け。変にストレス感じて、歩く音聞き逃して鉢合わせでもしたらどうする!)
彼は自分を戒めると、一旦立ち止まり、周囲の様子を確認する。そのときだ、近くからガシャンガシャンと機械の歩くような音がした。ロボットを足音に違いない。それを聞いた紫夜は今いる通路の側にあったコンテナの裏に身を隠す。
(レールガンはダメだ。威力がデカすぎるし、当たるか分からない。いつもの接近戦で仕留める!)
紫夜は左腕の《エラビレラ・アニゼコ》に内蔵されている高周波ブレイドを展開し、刀身を振動させる。聞こえる音からしてロボットがこちらへ近づいてきた。隠れているコンテナのある通路を歩いている。そして、コンテナの裏を確認しようとせずにそのまま通路を直進し、コンテナの横を通り過ぎようとしていた。
(今だ!)
ロボットがコンテナを通り過ぎた瞬間、背後からブレイドを構えた紫夜が現れる。彼はそのままブレイドでロボットの右足の関節を切り裂く。立つことが出来なくなったロボットは前に倒れた。ロボットの背部にはレールガンが装備されている。砲撃型だ。
(こいつはとにかく撃たせないことが先決だ。手足は後でいい!)
紫夜は倒れたロボットを押し倒すように乗りかかると、振動させたブレイドをロボットの背中とレールガンのエンジンであるバックパックの接合部に当てる。前回の戦闘で、手足を失ってもレールガンを撃てる状態であれば危険なことは熟知していた。そのため、手足よりもまずはレールガンと本体を切り離す。
だが、そのとき、紫夜の背後からガシャンガシャンと機械の歩くような音がした。
(まさか・・・。こんなときに・・・)
背後から右腕に長い巨大な槍ようなものとそれを内蔵したエンジンのような装置を装備したロボットが現れ、こちらへ近づいてくる。同時に右腕の装備の巨大な槍の部分が上下に勢いよく動く。これからイクスザラを突き刺すために。最悪なことに押し押されているロボットのバックパックから轟音が鳴り響く。これは以前の交戦でも耳にしたレールガンを撃ちだそうとするときに鳴る音だ。
(やばい! このままレールガン撃つ気か! このまま地面に撃ったら、こんな誘爆する設備の中! 早く切り離さないといけないのに、後ろからあんな殺意マンマンの武器を持ったロボットが来るなんてどうすれば・・・)
順調に接合部を切り離しつつあるが、切り離したころには、もう一体のロボットのあの巨大な槍で突き刺されてしまう。だが、そちらの対処に向かえば、砲撃型がレールガンを放ち、流れ弾や衝撃で最悪周囲の設備が誘爆して大惨事になりかねない。
紫夜は一瞬で頭の中を整理して、機転を利かせる。
(賭けるか・・・)
紫夜は右手に《ピストラ》のリモコングリップを持つと、それを操作する。すると、背部に装備されていた《ピストラ》がイクスザラからパージされた。地面に落ちた《ピストラ》のレールガンの砲口は今近づいてきている槍を装備したロボットに向けられている。
(当たれよ・・・!)
紫夜は《ピストラ》のトリガーを押す。《ピストラ》のエンジンが轟音を上げた。槍を装備したロボットが紫夜に向かって近づき、彼にその上下に勢いよく動く槍を突き刺そうとする。そのとき、紫夜は砲撃型のバックパックを本体から切り離し終えた。切り離されたバックパックが地面に転がり、それと同時に《ピストラ》のレールガンの一門から砲弾が放たれる。《ピストラ》から放たれた砲弾は槍を装備したロボットに命中し、砲弾の当たったロボットは爆発し、槍のようなものを装備した右腕を含めた四肢が敷地内に吹っ飛ばされた。そのとき、地面に転がったバックパックから轟音が消える。暴発防止だろうか。本体から切り離されると、レールガンのエンジンが停止した。彼はレールガンのエンジンを停止させつつ、ノールックで《ピストラ》の砲撃で背後から襲い掛かるロボットを仕留めたのだ。
(なんとか最小限に済んだ・・・)
紫夜はレールガンを失ったロボットの手足を切断すると、胸部装甲を切り離し、内蔵されている自爆装置を露出させる。すると、自爆装置にイクスザラの右腕に内蔵された液体窒素発射装置から液体窒素を撃ち込む。その後、砲撃型の頭部を切り離し、砲撃型を完全に機能停止させた。これでロボットが動き回ることも、自爆の心配もない。
(あの殺意マンマン装備のロボットは手足が吹っ飛んだし、もう何も出来ないでしょ。これで終わりかな)
だが、紫夜の頭にあることがよぎる。
(もしあえて一度現れた場所及びその近辺にロボットを出したなら・・・もしかすると・・・)
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