第15話
雪風と浜風は、敵艦の進路が変わったことを受け、敵が補足してくれたことがわかり、戦闘指揮所(CIC)がにわかに活気づいた。
各部門が慌ただしく情報を処理していく中、見学で訪れていたシャルジュレスの士官たちは驚いてCICの様子を見ていた。
「艦橋ではなくここで指揮を執るのですか。」
「はい。
戦闘は120ディバイス以上の範囲で行われ、非常に多くの情報を統合して判断する必要があります。
その為、艦橋からでは戦域を見渡すことが出来ず、更に情報を一か所に集約する方が合理的なのです。
レーダーなどで収集した周囲の状況をリアルタイムであそこの大型スクリーンに映し、それを見ながら指揮を執ります。」
と説明し終えると同時に本郷司令がCICに入室してきた。
定位置に立つと、CICの面々を見まわして口を開いた。
「これから、警告を発するがまず戦闘は避けられない。
我々は4年旧世界で戦争をしてきた。
この世界では平和でありたいと誰もが思っていたと思うが、現実は残酷なようだ。
この勝利の向こうにライシャル人との友好があると信じ突破する!
では、シャルジュレス艦隊へ通信。
内容は
"こちらは日本国艦隊。わが艦隊は帰投途上である。
何故追跡するのか、貴艦隊の目的を答えられたし。
15分以内に返答無き場合は、当艦隊への敵対行為と断じ戦端を開く。"
以上。」
「送信完了しました。」
「……。
15分経過。応答なし。敵艦こちらに向かい更に増速。」
「全兵装最終確認。これより戦闘態勢へ移行する。
と言っても、現状は逃げの一手だが、敵には見失ってもらっても困る。
合流ポイントまで付かず離れずで移動。」
それから4時間ほど一定の距離を保ちながら移動していると副官は戦況モニターを眺めながら恨めしそうにいった。
「しかし、対艦ミサイルを温存しながら戦うというのもきついですな。
こうなると艦後方にも主砲が無いことが悔やまれます。」
「まったくだ。いっそのこと後ろ向きに航行するか」
ちょっとしたやり取りで場が和んだ直後に再び緊張が走った。
「浜風より緊急電。
ソナーに感あり
2時の方向、海中より大型の物体が急速接近。」
「当艦も捕捉しました。速度はおよそ15ノット!」
本郷は潜水艦を完成させていたのかという疑問を呈するよりも、事態解決の判断を下した。
「対潜戦闘。目標を攻撃」
本郷の指示を受け雪風の艦長寺間が指示を出した。
「砲雷長。短魚雷発射。」
「…目標に命中!」
波しぶきと共に海上に浮かびあがってきたのは魚と爬虫類が混ざったような外見で甲羅をもつナガスクジラ程の巨大な生物だった。
その生物は短魚雷の攻撃ですぐに絶命せず、驚くべき速度で肉薄し、浜風に体当たりし絶命した。
「浜風、一部浸水及び損傷。速度維持できません!」
「浜風、現状の報告を」
「艦後方に受けた体当たりで浸水をしましたが、これは15分以内に応急処置が完了します。
しかし、体当たりの際にスクリューが破損したようで推力が得られません。最高速度は20ノットを下回る予測です。」
「15分停止だと夜も明けるし、更に20ノット未満となると敵艦隊の射程に入る可能性もあるか…。
艦隊総司令部に通信を。
浜風が現地海洋生物の体当たりを受け、20ノット未満に速力低下。
敵艦隊の射程に入る可能性があるので、再度勧告後に攻撃を行う。
以上。
艦長。
敵艦に再度警告。"5分以内に停船しなければ、攻撃する"以上。」
実践を経験してきた彼らにとっても海洋生物による損壊は予想外であった。
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