3章 仮15島沖海戦

第13話

8/16夜間ににジュリアス知事との間に密約が提携され、シャルジュレス派遣艦隊が統合軍の母港である横須賀港を出港することに決定したので急ピッチで編成が進められていた。

出来る事なら陸上自衛軍の陸上戦力とと海上自衛軍の艦艇も編成に組み込みたかったが、残念ながら調整を行う時間はなく、また、その他のライシャル人国家が日本排斥行動をとる可能性を鑑みてまずは統合軍の戦力のみで編成することとなった。

編成は空母赤城、加賀を中心にドッグ型揚陸艦 由良、給油艦十和田、護衛の駆逐艦秋月、磯風と統合軍の艦艇と上陸戦力、航空戦力のみを先行で出航し、陸海空の各軍は別途部隊を編成し本土防衛と援軍とに分ける事となった。


赤城と加賀は戦闘機の搭載数を減らしF-4を40機ずつの計80機、代わりに空挺部隊を運用するためのティルトローター機のヒメウを計30機積載。


由良は道路条件が不明な為、戦車は6両+45式歩兵戦闘車1両のみとして、47式機動戦闘車を18両と軽装甲機動車21両、対地ミサイル車両を9両、自走砲を6両その他炊事、給水、衛生用車両等を10両分乗せ全車両合計69両を積載。


途中で護衛として雪風、浜風と合流する事となっており最終的に計8隻の艦隊となる予定となった。


東山が今回の各部隊長と会議をしているときに統合軍空挺部隊の大隊長降矢が手を挙げた。


「東山将補、空挺部隊につきましては、私の部隊で評価試験中の装備を今作戦に投入したいのですが宜しいでしょうか。」


「装備というのは強化外骨格ですか。」


「はい、ライシャル人は身長は変わらないですが、筋骨が発達しわれわれよりも力が強いと聞きます。生存率と作戦の成功率を高めるためにも使用の許可を頂きたいと思っております。」


現在評価試験中の強化外骨格は、重機関銃を片手で使用したり時速30km程度で走ったり高度40mから降下する事ができるパワーアシスト機能と防弾性能、耐衝撃機能を合わせた装備品で正式採用が決まれば56式 強化外骨格と命名される予定である。


「降下作戦行う強化外骨格運用対応のヒメウ改がまだ10機しかないので、数が足りないのではないですか。」


「はい、しかし不便ですが通常のヒメウでも強化外骨格の運用は可能です。

その場合、ヒメウ改の他に最低限必要な機数は26機、予備も考慮し通常型のヒメウは30機で合計40機あれば問題ないかと思います。」


「既に計算していたわけですね。

最後に条件があります。

今回の出動については技術チームを必ず同行させること、万が一破棄する場合は確実に隠滅処理をすること、出航の時間は伸ばせないので5時間以内に準備を完了させること、以上を条件とします。」


「ありがとうございます。

技術陣は既に選抜が完了し、同意を取っておりますので確実に間に合わせます。

それでは準備に入りますので、失礼します。」



****************



シャルギアに入港していた雪風と浜風は反クーデーター軍の若手士官計10人を新たに乗せてシャルジュレス派遣艦隊群と合流するために出航した。

合流予定ポイントは調査を行っていた仮15島を予定していたが、途中で高天ヶ原からクーデーター派が支配する港から出港した艦隊が有ると警告が届いた。


第一臨時救出隊旗艦の雪風でその警告を司令の本郷2等海佐が受け、通信で東山将補と会議を開いた。


「将補、補足した艦隊はクーデター派と予測され9隻で当艦隊の進行方向1時方向から進路を塞ぐように移動しております。

進路を一時的に10時の方向にして速度を上げることで進行方向を塞がれる前に突破は可能です。」


「なるほど、ただ気になるのはタイミングが良すぎる点です。内通者がいる可能性が否定できません。

更に仮15島での調査は事前に先方の政府に通達をしている為、場所は相手も解っているとすると、振り切ったとしても、仮15島にやってくると考えた方が良いでしょう。

そして仮15島近海で戦闘になった場合、そこに残っている研究者たちに危害が加わる可能性があります。

先ほど仮15島の研究チームに撤収時間を聞いたところ、8時間だそうです。

しかしこの時間は実験機材と、船一隻を置いていく場合の時間です。」


それを聞いた本郷司令は嘆息して答えた。

「では、戦うしかないでしょう。

出航しても足の遅い民間船では補足される可能性も大きいですし、何より今の日本に外洋を航行できる船や資材を軽々しく放棄できる状況ではないはずです。」


「えぇ、その通りです。

現在保有している対艦ミサイルは2隻で24発で間違いないですか。」


「はい、間違いありません。」


「相手の装甲の厚さが未知数です。

手持ちの搭載ミサイルで沈められるか不明ですので、敵艦を誘導しましょう。

航路を転送しますので、その航路に添って敵を指定の海域へ誘導してください。

この海域でしたら、赤城、加賀から烈風が届きます。

あと、敵艦の砲の威力も未知数なので、明治期の敷島型の射程を参考に、敵を誘導する際もなるべくその射程に入らない様に注意してください。

あと、対外的にはシャルジュレスとは条約を結んでいないことになっていますので戦闘前に勧告をお願いします。」


「解りました実戦経験の差を見せつけてやろうと思います」


「その意気でお願いします。」


東山と本郷は微笑みあって通信を切った。

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