いすゞのトラック
増田朋美
いすゞのトラック
いすゞのトラック
どうして、こんな人生になってしまったのだろう?
篠崎美寿々の頭の中にはいつもこの事が思い浮かぶのだった。
あの時、あんな学校さえいっていなければ、自分の人生は、こんなに不幸な人生にはならなかっただろうに、という思いがいつでも湧き出してしまう。道路を車で楽しそうに移動したり、電車の中で楽しそうに話している人を見かけるたびにそう思う。時には、高校生なんかが、友人と楽しくしゃべっていると、ああいいな、わたしもああいうことしたい!と、憧れというか、嫉妬の気持ちがわいてきてしまうのだった。
今の自分は、もう30を超えてしまって、年齢的には、もう大人という事になってしまっている。だけど、心の中ではやりたかったことを、やり遂げられなかったせいで、成長が止まってしまっているような気がする。事実その通りかどうかは不詳だが、いつまでも憂鬱な、辛い気持ちが続いてしまって、10年以上精神科のお世話になっているし、精神病院に入院もした。そういう訳であるから、多くの社会人がやるべき、外へ就職先を見つけて、働くという事が、彼女にはできなかった。
美寿々は、高校生までは、普通の少女だった。障害者になるとは、誰も予想していなかった。学校の成績はさほど良いわけではなかったが、手芸とか、料理関係が好きだったので、そういう分野の仕事に就こうかと考えていた。しかし、高校三年の進路説明会で、担任教師は、そんな素人がで来ることを勉強するとは何事だ!と、彼女をしかりつけた。そして、医療や福祉の仕事に就き、人の役に立つことこそ、正しい生き方だと彼女に怒鳴りつけた。美寿々は、その先生が怖くなって、学校に行けなくなった。すぐ戻れると思っていたけれど、学校の先生に叱られた時の記憶は、いつまでも頭に残ってしまって、学校近くを訪れることができなくなった。関連する言葉を口にすれば、すぐに思い出して、彼女はすぐに発狂し、ものを壊した。これを医者は、フラッシュバック症状と言った。いずれにしても、この症状は、いくら薬を飲んでも落ち着かず、人が何か言えば再燃し、落ち着くことはなかった。仕方なく、五年近く精神病院に入院して、隔離生活を送った。彼女が、落ち着いて過ごせるようになったのは、30歳を越してからであった。そうなるまでに、10年以上の歳月を有したということになる。
でも、もう年齢的に勉強し直すことはできないから、働くしかなかった。高校中退で、在学中に取った普通免許しか資格のない彼女に、それは難しい話だった。仕方なく彼女は、両親に許可をもらい、大型車の免許を取ることにした。其れは、成績の悪い彼女にも、比較的簡単に取得できた。そして、ある運送会社の従業員募集に応募したところ、事情を聴かれるまでもなく、すぐに採用された。会社に通い始めると、父母はやっと安心したのか、それとも力尽きてしまったのか、二人ともあっけなく亡くなってしまった。学歴もないから恋愛も友達もおらず、彼女に残ったものは、いすゞ自動車の四トントラック、エルフだけであった
美寿々が勤めている運送会社は、いわゆる宅配便ではなくて、学校教材を、学校へ届けるのが主な業務だった。其れは、高校でなくて、小学校であったから、フラッシュバック症状は起こることはなかったが、彼女にとってはつらい作業である事は間違いなかった。学校という場所へ行くのも怖いし、そこで人と話をするのも苦手だった。
そういう訳で、物資を運び終えたらすぐにトラックに戻ってしまう美寿々に、学校の人たちは、ずいぶん無口な人だなあという評価を下した。中には、変な人という人も少なくなかった。よほどトラックが好きなのかとからかう人もいる。気にしないのが一番だと、励ましてくれた人もいたが、どうしても、
自分を変えるという事は、なかなかできないというのが本当の事だ。それではいけないってわかっているんだけど、そういうことは、どうしても私にはできない。美寿々は、そう思いながら、トラックの運転手の仕事を続けていた。
それでも、自分の居場所と思われる場所はあったような気がする。バラ公園近くにある、松林のようなところで、トラックを止めて、フロントガラスをレジャーシートで隠して姿を消し、トラックの中で、そっと、薬を飲む。薬と言っても、睡眠薬で、安全が確認されているから、大量に持ち歩いても死ぬようなことはない。今はさほど危険すぎる睡眠薬を処方されることも極めてまれなんだけど。その、睡眠薬を飲むと、体中が気持ちよくなる。体中の力が抜けて、まるで極楽浄土に行ったような気持ちになる。とても、トラックの中にいるとは思えない。睡眠剤はさほど強力なものではないので、数時間しか効かず、すぐに目を覚ましてしまうが、それでも、素晴らしい快感をもたらしてくれるので、それでよかった。医者に言わせると、オーバードーズというらしいが、それしか自分を癒してくれる方法もないので、そうするしかない。
今日は、診察の日か。彼女は手帳を開いて、そんな事を思い出した。二週間に一度は、診察してもらわなければならない。医者と話すのも面倒だが、そうしなければ、愛用の睡眠薬は、もらえなくなってしまうので、行かなければならなかった。
その日、美寿々は 勤務を終えると、影浦医院へ行った。影浦医院は、営業所から歩いていける距離だった。本当は、トラックに乗っていけたらいいのだが、影浦医院にはトラックを止められそうな駐車場がなかった。其れはしょうがないので、美寿々は歩いていく。
彼女が影浦医院に行くと、待合室にはたくさんの人が待っていた。仕事が終わって、診察を受けに来る人も多いためである。そういう人は、さほど重症でない人もいるが、軽症重症と、治療の難しさとは、まったく関係はない。中には、軽症なはずなのに、何十分も話し込んでしまう人も少なくなく、其れで余計に待たされるのである。美寿々は、たくさんの人が待っている待合室の椅子に座った。立って待たされるよりましかと思った。
まあ一時間くらい、影浦医院の待合室においてあった、ゴシップだらけの雑誌を読んで過ごし、篠崎美寿々さんと呼ばれた時は、もう夜の八時近くなっていた。
美寿々は、やっと呼ばれて、診察室に入る。診察室に入ると、影浦千代吉先生が、椅子に座って、待機していた。
「今日は、いかがですか?何か変わったことはありましたか?」
「変わったことは、そうですね、、、。」
と、彼女はそういうが、頭が働かなくて、一生懸命考えても、答えが出ないのだ。影浦が、随分呂律が回っていませんね、と、わらって言う。
「また、やったんですか。」
もうわかっちゃったか、、、。影浦先生さすがだなあ。
「ええ、また、運送会社のトラックの中で。」
「そうですか。それではいけませんね。本当は、大量に薬を飲んでしまうのは、やめた方がいいんですけどね。」
影浦はにこやかに笑っているけれど、結構症状としては、重症な方なのである。
「もし、大量に飲んでしまって、事故でも起こしたらたいへんなことになりますよ。ほら、こないだ、京都府でしたかね、癲癇を持った人が、クルマを運転して暴走し、横断歩道を渡っていた人が、死亡したという事故がありましたね。」
「ああ、それは報道で知りましたが、そんな事故と私には関係ないでしょう。そういう、人の事とは、余り比較したくありません。」
と、美寿々は、説教はするなという態度で、影浦に行った。
「対岸の火事では済まされませんよ。癲癇の薬ではないですけど、似たような成分の薬ですから、それと同じだと考えておかないと大変なことになります。」
影浦は、溜息をついてそういうことを言ったのだが、
「でも、あたしには、薬が必要なの。それに、トラックも必要なの。だから、癲癇の薬であろうとなかろうと、薬飲んで、安定を図らなくちゃ。」
と、美寿々は言った。
「できれば、オーバードーズをしないで、トラックの運転手として生活してほしいものですが。」
と、影浦は言ったが、
「ダメ!あたしは、それがないと大変なことに!だから、今回も薬を出してください!」
と、彼女は懇願した。
「だから、本当は、そういうモノに頼らないほうがいいんですけどね。そんなに、トラックの運転手をしているのは嫌ですか?」
影浦は、そういうことを聞いた。
「そんな事いわれたって、あたしは、薬がないとだめなだけです。トラックの運転手をしているのはやむを得ないから!医者はよく平気でいられるわね!患者からお金をもらって、そういう倫理的なことを言って、出来そうもないことを平気で言うのね!あたしたちが、どんなに苦労して、生活しているかも知らないで!」
と、美寿々は、影浦に、詰め寄るように言った。
「そうなんですけどね。僕たち医者の立場から言えば、こういう病気になったという事は、もうこんな生活もう嫌だと言っているんだと思うんですけどね。確かに、やむを得ず、働かなければいけないという事はあると思いますけど、本当は、人生を変える転機だと思ってほしいんですけどね。自分を変えるチャンスだと思っていただければ。」
「先生は、あたしに、何をしろとおっしゃるんですか。あたしは、変える事なんて、できやしませんよ。今の生活なんて変える事は出来ないし、このままトラックの運転手を続けるしかないんです!」
「そうですね。まあ確かに、医者は体についてのアドバイスはしますけど、ご自身の人生については、何もいう事はありませんね。唯、僕は医者として、こうした方がいいのではないかと言っているだけで。例えば、動脈硬化症の人は、中性脂肪を取りすぎないようにとアドバイスするのと、おなじようなことだと思っていただければいいのですが、心というモノは、そうはいかないんですね。精神科医というのは、無意味なものですなあ。」
と、影浦は、美寿々にそういうことを言った。
「そんな、のんきな話をしている暇はないんですけどね。みんなどうしてあたしのことをわかってはくれないんだろう。」
美寿々は、涙を流してそういうことを言ってしまう。
「あたしは、薬と、いすゞのトラックしか、頼れるものがないのに。」
「そうですね。」
と影浦は言った。
「人間の友達がいれば、また違った人生になるんではないかなと思います。あなたの事を理解してくれるような人が、一人だけでもいてくれたらと。もちろん、人間ですから、一人っきりでは、やっていけませんもの。時々、心の病気になって、そういう事に気が付く人もいるんですよね。」
「そうなんですか、、、。」
美寿々は、ため息をついた。どうせ、偉い人の前では、何を言っても無駄なのだった。もう、こういうことをいわれるから、医者へ行くのは嫌なんだ。でも、薬をもらう事ができなくなってしまうから、ここにかようしかないのだ。
とりあえず、今日は、薬は処方してもらえた。薬をもらわなければ、生活していかれない。あたしは、いすゞのトラックと一緒に生きていかなければならないのだから。逆をいえば、それさえ守ってくれれば其れで良い。
薬を大量に貰って、彼女は、薬局を出た。空はもう真っ黒になっていて、もう夜の九時近くなっていた。折角マストアイテムをもらえたのだから、お祝いに何か食べていきたいなと思ったけれど、やっているのは、コンビニくらいしかない時間だった。コンビニは、すぐ近くにあった。幸いそこには、イートインスペースもある。イートインすると、税金が上がって、飲食物が多少値段が高くなるのは知っている。其れは、法律で決まっているから、仕方ない事であった。まあ、多少余分にお金を払ってもいいや。と、思いながら彼女はコンビニに入った。
コンビニの弁当売り場は、ほとんどの商品が売れてしまっていた。仕方なく、おむずびを三つかって、レジで支払いをした。コンビニではコーヒーも売っている。ペットボトルの飲み物もあるが、それは、なんだか買う気になれない。こういう時は、コーヒーのほうが、祝いの気分になれるような気がするので、とりあえず、コーヒーも注文した。このコンビニでは店員にコーヒーを入れてもらうという決まりになっているので、コーヒーができるまで少し待つことになる。
「おい一寸、そこにある、お茶を一本取ってくれ。僕、車いすで何もできないので。」
と、ふいに後ろからそんな声がした。こんなことは、店員がしてくれるだろうと思ったが、店員は、自分の分のコーヒーを入れてくれているので、ほかの店員はいなかった。なので、自分がするしかないかあ、と思って、彼女は、いやいやながらも、売り棚にあったお茶をとった。
「之ですか?」
後を振り向くと、男性が一人いた。今の時代に合わない着物を着て、車いすに乗っていた。どうもこの人、変わった雰囲気を持っている。
「おう、ありがとうよ。助かったぜ!」
彼は、それを受け取って、軽く一礼した。そうやって礼をしてくれる人がいるってことは、何だか嬉しかった。彼の方も、プリペイドカードで、そのお茶代を支払った。
「お礼に、なにかしなければならんな。お前さん、お茶か弁当を買いに来たのか?」
と言っても、美寿々はすでに、おむすびとコーヒーのお金を支払っていた。もう支払ってしまったから、と言いかけたが、彼のその顔を見て、なにかほしいと言わなければならないなと思った。それでは、既にコーヒーを買ってあるけど、もう一回ジュースを取って、彼にこれを買って、と、お願いした。
すると、彼は、にこやかにそれを買ってくれた。そして、はいよと彼女に、それを手渡した。
その時、美寿々の鞄から、ハンカチーフが落ちた。と同時に、薬の入った袋も落ちてしまう。薬は、白い袋に入れているのが通例だが、なぜか影浦医院では透明なビニール袋に入っているのであった。中に入っている、赤い錠剤が、丸見えになってしまった。
「ほう、飲む拘束衣か。」
と、彼は言った。そんな、私の秘密兵器を、そんな風に詰るなんて!と思った。
「ちょっと、こっち来い。」
彼は、美寿々に、イートインスペースへ来るように言った。彼女は急いで秘密兵器を鞄の中に入れて、急いで彼についていく。
「座れや。」
と言われて、美寿々はイートインスペースの椅子に座った。
「とりあえず、結びを食べな。悩んでいるやつは、大体腹が減っている。何か食べれば、一寸は落ち着くもんだぜ。」
と、彼が言う。そういうことを言ってくれるのであれば、この人は悪い人ではないのかもしれない。着物着てたり、しゃべり方がちょっとやくざの親分みたいな感じだけど、そうではないのかも思い直して、美寿々は、買ったお結びを食べて、コーヒーを飲んだ。本当はいつもだったら、トラックに戻って、すぐに極楽浄土へ行けるように、あの赤い錠剤をがぶ飲みする時間なのだが、今日は、この男性がいるせいか、それは出来なかった。
「で、お前さんは、いったいなんで、そんな危ない薬を飲んでいるの?」
彼は、短刀直入に言った。
「危ない薬?」
なんだそれ。と言いたいばかりに、彼女は答えた。
「そうだよ。アブナイ薬。其れは重症な患者が、眠れるようにする薬じゃんかよ。下手をしたら、大変なことになるって、聞いたことあるぜ。本当に、大変な奴は、薬なしではいられなくなって、盗みをする奴だっているんだぞ。」
と、彼はいう。また、こういう教訓的なことをいわれるのかなと彼女は、本当につらくなった。また、自分で何とかしろとか、そういうことを押し付けられるのはまっぴらごめんだ。たとえそれが正しいといってもだ。もうすべて自分次第とか、自立しなさいとか、そういう言葉は嫌だと思う。そういうことをいわれるのなら、私に死なせてくれ。美寿々は、いつもそういう事を思っている。
「まあ、僕も、歩けないからさ、薬をどうのこうのという事は出来ないけどさ。」
と、彼は、そういうことを言った。
「でも、よほどつらいもんがあったという事は分かるよ。何か、辛いことでもあっただろ。口に出して言えないくらいの、辛いもんがな。」
という、彼。そういうことを言ってくれた人は初めてだった。
「それは、確かにつらいものがあるけどさ、薬は、お前さんをどうにかしてくれるもんで、ないよね。」
と彼はそうつづけた。
「お前さん、商売は何やってんだよ。若しかしたら、何もしてないの?まあ、それをどうのこうのという訳ではないけど。僕も、ただの風来坊だからねエ。」
「ただの風来坊?」
と、美寿々は素っ頓狂に言ってしまう。同時に、何だやくざではないのかと思ってほっとする。
「そうだよ。時々、着物を縫ったりしているの。勤め人ではないので自分の事を、風来坊と言っている。」
と、彼は言った。そういう事だったのか。つまるところ、仕立て屋さんか。
「そう。すごいじゃない。なんだか手に職をつけているみたい。変な会社に行って、嫌な仕事するより、よほどいいわ。」
と、美寿々は、そういうことを言う。
「まあ、そうなのかは分からないけど、とりあえず、着物の仕立てをやれて、今は幸せだよ。」
と、彼は言った。
「そうなのね。あたしも、そういう風に思えればいいわ。でも、あたしは、今の仕事では、そういうことは思えないなあ。」
美寿々は、はあと溜息をついて、コーヒーを飲んだ。
「へえ、じゃあ、お前さんは何をしていたんだよ。」
「ええ、高校中退で、何も資格も持ってなくて、大型トラックの免許しかないから、トラックの運転手でしかないのよ。」
こういうときは、本当の事を言ってしまった方がいい!と思って美寿々はそういってしまう。なんだかそれを言った瞬間は本当に苦しかったけど、話してしまうと、なにか詰まったものがとれたような気がした。でも、すぐに、彼が何て言うか怖いという恐怖が生じてしまう。彼は、トラックの運転手をしている自分になんというだろうか。やっぱりバカだなとか、何だ大したことしてないじゃないかとか、そういうことを言うに違いない。だから、もうだめだ、私!と、考えていたその時、
「へえ、いすゞのトラックか?」
と、彼は言った。
「つまり、お前さんは、いろんなものをいろんな所へ運ぶ仕事をしているわけね。それも、ちゃんとやれてすごいじゃないかよ。」
「すごいのかしら。」
思わず、美寿々はそういってしまう。逆に、そういうことをいわれると、もっと辛いことを、いわれるのではないかと予想してしまう。長年そう言われ続けてきたからである。
「僕は、運転できないからね。出来る事は、みんな違っていいと思うけど、其れはいけないのかい?」
と、彼はいうのだ。そんな事、あり得るはずがないじゃないか。だってあたしは、高校中退で、大型の免許しか持っていない、だめな人間なんだ。閉鎖病棟に入院したこともある、だめな人間なんだ。親も、満足な人生を送らせてあげられなかっただめな人間なんだ。そういう風になるように見舞われただめな人間だ。と、いい返そうとしたその瞬間、彼がこういうのだった。
「もし、辛かったら、トラックに乗って、走ってみるといいよ。お前さんの相棒は、お前さんの出来る事を、ちゃんと知ってるから。」
「そんな事、、、。」
と、美寿々が、そう言うと、
「思いっきりトラックを可愛がってやれや。トラックは、動物みたいに、愛情をもってやればな、お前さんの味方になってくれるからな。」
と、彼は答えた。
「そうなのね。そう、考えるようにしておくわ。」
美寿々はその時は意味は分からなかったけど、彼にそう言われてとりあえず頷く。
丁度その時、コンビニの中で流れているラジオ番組のアナウンサーの声が変わった。という事はつまり、時間がたったという事だ。
「じゃあ、僕は帰るが、お前さんはゆっくり休めや。ちなみに、僕の名前は影山杉三という。」
と、彼は、にこやかに言って、イートインスペースを後にした。影山杉三さんか。変わった名前だなあ。と思いながら、美寿々はコーヒーを飲みほした。
次の日、美寿々が出勤すると、いすゞのエルフが待っていた。確かに、昨日杉三という人が言ってくれたように、自分が乗るのを待っていてくれるような印象があった。そうだよね、このトラックで、荷物を届けているのは私。つらいことがあっても、やっていかなくちゃ。そう考えて美寿々は、トラックのエンジンをかける。トラックは、自分を守ってくれる妖精のように、動き出した。
いすゞのトラック 増田朋美 @masubuchi4996
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