第9話

「それでは本日の授業はここまでとする、皆気をつけて帰るように」


教師の合図に生徒は各々帰宅の準備に入る。


「セス、帰るわよ」

「畏まりました、お嬢様」

「‥‥‥‥‥」

「お嬢様?」


俺の返答に反応ないお嬢様、前を向いたまま座りながらちらちらと俺を見る。

これはまさか?


「リビア、帰ろう?」

「ええ!!帰りましょ!!」


やっぱりかー

俺は心のなかでため息を吐く。

そして帰宅のため席を立った時


「あ、あの!!すいません!!」


一人の女子生徒が話しかけてきた。


「なにかしら?」

「い、いや、その、シルフィール君に、お、お話がありまして」


お嬢様が返答すると女子生徒は俺を指名してきた。お嬢様がちらっと俺に視線をむける。

その視線には


誰、この女?浮気?死にたいの?


みたいな思いを感じた。

いや、仮にこの女子生徒となにかあればリビアは行動に移すのだろう。その証拠になるかは分からないがリビアの目から光が消え、全てを飲み込むような目をしている。

震える俺はなんとか心を落ち着かせ、女子生徒に話しかける。


「お、お初にお目にかかります。クルセス・シルフィールです。私になにか?」


然り気無く初対面だということを伝えながら挨拶をすると女子生徒は瞳に涙を浮かべながら俺に抱きついてきた。

そして泣き出しそうな震える声に嬉しそうな声色を載せ


「や、やっと会えた!!」

「え?」


呆然する俺、女子生徒は俺の腕の中で泣き出しながら「会えた!!会いたかった!!」と何度も口にする。そんな俺達の動向をクラスメイト、果ては廊下を歩く生徒・教員が何事?と注目する。

そして動けない俺と女子生徒、クラスメイト等を違っていち早く動いたのはお嬢様だ。


「私のセスから離れなさい!!」

「きゃっ!!」


お嬢様は女子生徒の服を掴むと一気に後方へと降り投げた。女子生徒は俺から離れ三歩ほど後退る。そして信じられない!!見たいな目をしながら口を開いた。


「なにするんですか!?」

「貴方が私のセスに触れるからです!!」

「この方はのものじゃありません!!」

「貴方、セスのこと知っているの?」

「もちろんです!!だって、か、彼は、私の王子様ですから!!」

「なっ!?」


驚くお嬢様はくるっと俺に顔を向けた。その顔は怒りに満ち溢れ、まるで鬼のようだった。そして大きな声で叫ぶ。


「どうゆうこですかっ!?」


俺は思う。


俺が聞きたいわっ!!!!


☆☆☆


「それで君は誰ですか?」

「私のこと忘れちゃったの!?」


場所を移して俺達は食堂に来た。

食堂の端の席で俺の隣にお嬢様、そして向かい側には俺に抱きついてきた女子生徒が座っている。俺の質問に女子生徒は信じられたいと言うような顔をして驚いていた。


「すいませんが、私にはさっぱり‥‥」

「そんな‥‥」


女子生徒は下を向き黙り混んでしまう。

すると先ほどまで殺気をビシバシ俺に向けていたお嬢様が口を開いた。


「こほん、その前にナナリーさん?貴方はどこでセスに会ったのかしら?」

「ぐす、それは‥‥‥」


女子生徒、ナナリー・ハシュナ子爵令嬢は口を開いた。

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