第5話
「それではこれよりイザーク・ガルシア対クルセス・シルフィールの模擬試合を始める!!両者位置につけ!!」
審判の教師の指示で俺もイザークも所定の位置につく。
結局俺はお嬢様とイザークの賭けを止めることができなかった。しかも俺達の話を聞いた生徒たちが面白がり騒ぎだし、最後は担当教師まで一緒になって賭けを始める始末。ちなみに胴元は俺が敬愛するお嬢様だ、
なにやってるのお嬢様!?
お嬢様は楽しげに場を盛り上げる。
「さぁ~、賭けた賭けた!!対戦カードは皆様ご存知イザーク・ガルシア!!身の程知らずにも私を欲する筋肉バカ!!対するは本日転入して来たばかりの私の騎士!!クルセス・シルフィール!!さぁ、さぁ!!勝負はいかに!!」
「おぉ!!イザーク様に1000センズ!!」
「同じくイザーク様!!」
「わ、私はクルセス様に10000センズ!!あぁ~なんて素敵な立ち姿なんでしょ!!」
「ナナリー!?大丈夫!?」
こんなふうに盛り上がっております。
というかお嬢様?イザーク様の紹介に悪意を感じるんですが?
「ふっ、全く、俺の女神は素直ではない」
「‥‥‥‥」
イザークは今にもとろけそうな笑みをお嬢様に向けると頓珍漢なことを言う。
お前の耳はどうなってるんだ!!
それとも俺には分からない貴族特有の暗号でもあるのか?
〈試合を始める前俺とお嬢様のやり取り〉
「お嬢様!?どうすんですか!?俺が負けたらあんな奴のとこに行くんですか?正気ですか?頭大丈夫ですか!?」
「黙りなさい!!いい?よく聞きなさい?私は貴方が負けるなんてその辺に散らばる砂ぼこり程も思っていないわ、」
「はぁ、」
「それにこれはチャンスなのよ!!」
「チャンス?」
「そうよ!!まず貴方がアイツをぼこぼこのごみ雑巾にすれば周りの生徒も貴方の実力を認めるしクラスにも馴染みやすい、それに私に言い寄るあの邪魔虫を排除できるし、私が今まで我慢していたうっぷんも晴れる!!こんなチャンス逃すわけないじゃない!!」
「‥‥‥‥」
お嬢様‥‥一番最後のが一番の理由じゃないですよね?
俺のお嬢様は慈愛に満ちた優しい女性ですよね?
「いいセス、貴方はあの赤虫をぼこぼこのぼろ雑巾にしなさい、病院搬送、入院までならパウリー家の力で揉み消せるから!!」
そう言ったお嬢様の顔は俺が今まで見てきたどの笑顔よりも輝いていた‥‥‥
「それでは始めるぞ!!二人とも準備はいいか?」
「おう!!」
「はい‥‥‥」
「では、始め!!」
教師の合図と同時にイザークは地面を蹴った。そして俺の懐に飛び込むと中断から横に切りかかってきた。俺は一歩下がりギリギリでかわす。
「ふ、俺の一撃を避けるとはなかなかやるじゃないか!!」
「‥‥‥‥‥」
「だが、次はかわせ‥‥‥」バタン
「「「「「え?」」」」」
イザークはしゃべっている途中で倒れた。
教師が慌ててイザークに近づき確認するべく体を起こすとイザークは白目を向いて泡を吹いていた。頭には大きなコブを作って。
そう、俺はイザークの一撃を避ける時に自分の木剣でイザークの頭部に一撃を入れていた。正確には中姿勢から頭をあげるであろう位置に木剣を置いておきイザークが頭を上げたと同時に振り下ろしたのだ。
「だ、誰か担架を!!急げ!!」
そしてイザークは担架で救護室に運ばれて行った。
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