第2話
「クルセス」
「はい、お嬢様」
「お父様から聞いていますね?」
「‥‥‥はい‥‥」
ところかわってここはお嬢様の自室、お嬢様は部屋にあるお嬢様専用の大きなベッドに座りお気に入りの特大熊ちゃん人形を抱き締めている。
なにあれ?めちゃくちゃかわいいんだけど!!
普段は完璧な公爵令嬢の振る舞いをするお嬢様だが俺と二人の時だけこのように素のお姿をお見せくださる。お嬢様の執事である俺だけの特権というやつだ。あ、まだ見習いでした、
「ならよかった、明日から私が通う王立学園にあなたも通うことになっているからよろしくね♪」
「‥‥‥はい?」
「まだ婚約はしていないけど、あなたには私の婚約者として学園に通ってもらいます。お父様から聞いてないかしら?」
聞いてねぇよ!!!!
なにそれ!?旦那様そんなこと一言も言ってなかったよな!?
「あの、お嬢様、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「なにかしら?」
「なぜ私がお嬢様とこ、「婚約するのか?」‥‥はい」
「それは‥‥‥」
お嬢様は顔を熊ちゃんで隠して黙ってしまった。流れる沈黙の空気、なぜか重苦しい空気に耐えていると扉をノックする音が響いた。
そして扉の向こうから聞きなれた声が聞こえてくる。
お嬢様は顔を上げた。少し頬が赤くなっているように見えるが大丈夫だろうか?
「お嬢様?入ってもよろしいでしょうか?」
「ええ、大丈夫よ」
「失礼します」
入ってきたのは赤茶の髪をしたメイド、彼女はお嬢様の専属メイドでマリアと言う。年はお嬢様の3つ上でお嬢様は姉のように慕っている。ちなみにお嬢様は15歳、俺は元が孤児なので正確な年数は分からないがお嬢様同じ15ということになっている。
「なにかしら?」
「はい、先ほど先触れがありまして、今から殿下が御見えになるそうです。」
「‥‥‥そい、わかったわ、ありがとう、マリア、着替えを手伝って、クルセスはお茶の準備を、」
「「かしこまりました」」
俺はお嬢様の部屋から退室し、お茶の準備をしに厨房へと向かった。
☆☆☆
(オリビア視点)
クルセスが退室した後私はマリアに着替えを準備してもらい、今は髪を整えてもらっている。髪を櫛で流しながらマリアが話しかけてくる。
「お嬢様、どうでした?」
「‥‥駄目だった‥‥」
マリアの主語の抜けた問いに私はすぐに理解し即答する。マリアが聞きたいのは先ほどまで部屋にいたあの唐変木に私の気持ちを伝えることができたかたということ。
そう、私はクルセスのことが好きなのだ、
いえ、大好きなの!!
あの夜を連想させる漆黒の髪と全てを飲み込むような黒い瞳にいつも私を心配してくれる優しい声、
彼の全てを私だけのものにしたい、
だから私は今ままで努力してきたのだもの!!
苦手な勉強も頑張ったし、彼を守れるように剣術や魔術にも力を入れた、それに優しい彼に良いところを見せたくて慈善活動にも力を注いだ。でも結果彼は私をお嬢様や主君とは見てくれるけど一人の女としては見てくれなかった。それどころか関係ない男共が群がってきて彼との時間が取れなくなってしまった。
今だって彼との大事な時間を邪魔された。
私のことはほっといてください!!
彼以外の男なんて私にはそのへんにいる蟻と変わらないんですから!!
「お嬢様、お顔が大変なことになってます」「!?ごめんなさい‥‥」
「お気持ちは分かりますが、ご辛抱くださいませ、」
「え、ええ」
私専属メイドであるマリアは私にとって、親友であり、姉でもある私の大切な存在だ。マリアは私が彼に思いを寄せていることを知っているし、応援してくれている。
今回の彼を婚約者に!!という作戦もマリアと考えた。お父様は私に甘い、私が彼と結婚したいと言ったら最初もう反対された。でも最終手段である泣き落としをし、渋々ではあるが了承してくれた。
これから彼とずっと一緒にいられる!!
そう考えると自然に笑みが溢れる。
その時部屋のノックが聞こえ、大好きな彼の声、私の気持ちがふわっと浮き上がる。
そして
「お嬢様、王子殿下が御見えになりました」
「‥‥‥」
「お嬢様?」
「あ、はい、今行くわ」
今から私にとって苦痛の時間が始まる。
私が嫌々立ち上がると側にいたマリアが優しく背を叩いてくれた。
「お嬢様、頑張ってください」
「ありがとうマリア」
そして私はマリアと自室をでた。
廊下で待っていた大好きな彼の姿を見て沈んでいた私の心が再び浮上したのは秘密だ。
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