俺のお嬢様
伊佐波瑞希
第1話
「娘と結婚してほしい」
いきなり頓珍漢なことを口にする俺の主君の父であるアルセス・パウリー公爵、以後旦那様と呼称、ここはパウリー公爵家のお屋敷にある旦那様の執務室、旦那様は御自分の執務机に肘をつき、手を口の前で組んで重々しくそう口にした。その旦那様の前で何を言われたのか理解できていない黒い髪をした執事見習いの少年、
まぁ、言わなくても分かると思うが、
それは俺、クルセスだ。
旦那様の言う娘とは俺がお仕えしているこの家の一人娘であるオリビア・パウリーお嬢様のことだろう。
俺が黙っていると旦那様の後ろに控えている旦那様の執事を勤め俺の義理の父でもあるアルセスが咳払いをして俺に返答を促す。
俺は震える声で旦那様に確認をとる。
「だ、旦那様、い、今、なんと?」
「だから、我が娘、オリビアと結婚してほしいと言っている、それともなにか?娘では不満だと?」
「めめめ、滅相もございません!!!!」
「うむ、ならば決まりだ、来月には婚約式を行うらアルセス、準備をしとおけ」
「かしこまりました旦那様」
そう言って旦那様がどんどん話を進めていった。俺は状況が分からないまま執務室から下がるよう言われ、旦那様の執務室をでた。
☆☆☆
「一体何が?」
「クルセス!!」
「お嬢様!?お、お帰りなさいませ」
「ただいま~!!」
旦那様の執務室から出て状況を整理しながら廊下を歩いていると学園から帰宅したお嬢様が後ろから走ってきた。お嬢様は今は亡き奥様と同じシルバーブルーの髪に学園の制服を身につけ俺が一礼すると優しい笑顔で返してくれた。お嬢様は目元が旦那様に似てちょっときつめな印象をしているが、とても明るく俺のような平民にも優しく接してくれている。
そう、俺は平民だ、しかもスラム出身の孤児である。それがなぜ公爵家などという位の高い家で執事見習いをしているのかと言うと、
この話は長くなるのでまた今度ということで、
「クルセス?」
「失礼しました、お嬢様、学園は如何でしたか?」
「うん、まぁ、いつも通りよ」
お嬢様はため息をつきながらそう答えた。
実はお嬢様は今かなりめんどくさい立場におられる。
まず、この国の第一王子である、アルフォルド・エルモア殿下から求婚をされている。
それだけならまぁ、お嬢様の立場なら普通のことなんだがそれだけではない。
同じ公爵家で現王の宰相を勤めているラルド公爵家の嫡男、サザリー・ラルド
騎士団長を勤めるガルア侯爵家嫡男、イザーク・ガルシア
魔法師団長を勤めているシュザー侯爵家嫡男ライゼル・シュザー
そして最後に隣国の第2王子で今お嬢様の通う学園に留学中のカイゼル・ブルーム殿下
といかにもな方たちも求婚されており、学園生活に支障をきたしているのだ。
さて、ここで問題です!!
こんな王子や高位貴族子息達から熱愛されているお嬢様ともしもしがない平民でしかない俺が婚約をしたとします、するとどうなるでしょうか?
想像するまでもなく俺の命ないよね?
どうなるの?
主に俺の命が!!?
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