第9話 姉の謎に迫る妹
カフェオレスムージーを飲んで、碧について響子と話し合ったその日、帰宅すると瑠璃は部屋のパソコンで検索を始めた。勉強は図書館でやって来たことだし、今日はもう自由時間だ。
去年の夏の終わりごろに、碧が行っていた大学で、かなり世間を騒がせた事件があったことを薄っすらと思い出したのだ。
不祥事の記事はあっさりと出てきた。
【マルチ商法詐欺拡大 中心人物逮捕 現役大学生による悪質な手口】
「せっかく名門大学入れたのに、何やってんだコイツは……」
悩んで大学を辞めた碧の事を思うと、瑠璃は悲しくなりあらためて呟いた。
日付を見ると去年の八月。この頃になると碧は休学の後入院して、そのまま夏休みに入ってしまった時期だ。そのあたりから大学を辞めたいと話すようになっていた。
瑠璃自身も記憶を紐解いてみる。姉の在籍している大学の学生が捕まった事にはやはりびっくりしたし、両親も娘の先輩が詐欺師だという事には驚いていた。テレビもネットも三日間くらいは騒いでいた。大体一年近くたって、その記憶も今はだいぶぼやけているけれど。
ともかく、この二か月後に碧は大学を退学し、今年の四月に通信制の短大に入学し直したのだった。
(ひょっとして)
瑠璃は素早く頭の中を整頓して、順序立てて考えた。
碧に退学を決心させたのはこの事件なのではないのか。憧れていた大学に入れてしまったけど、自分はついて行けなくなり、入院までするようになった。その時、先輩が犯罪で捕まる。別に大学そのものが犯罪に係わっていたわけではないが、碧にとっては大学に巣食う予想外の悪を見てしまった事になるのではないのか。
(ヘソのゴマ助の事件のせいで、直接関係無いオータムズに幻滅するお姉ちゃんなわけだし)
理想が裏切られたことで姉の中の憧れが一気に嫌悪に変わってしまったように、瑠璃には思えた。
(こーゆー心理状態って度が過ぎると危ないんじゃなかったけ)
床にぺたんと座ったまま、パソコンを見ながら瑠璃は呟いた。
「お姉ちゃん、大丈夫かな……」
その呟きに答えるように、ノックの音がした。音の感じで碧だと分かった。
「いーよー。どうぞー」
マウスを動かしてクリックし、無関係の経済ニュースの画面にしながら答えた。
「瑠璃……」
眉間に皺をよせて、苦虫を噛み潰したような碧が入ってきた。その時、瑠璃が考えたことは響子との会話で碧を話題にしたことがバレたのかという事だった。冷静になればそんなことはあり得ないのだが、響子との会話を引きずって行動していたあとだったのでそんな気がしてしまったのだ。瑠璃もちょっと動揺していたのだろう。
「えっとなに?どうしたの?」
「話せる相手がいて良かったわ……。前にオータムズの事色々話したもんね……。私、今日こそ決心したの。オータムズのファン辞める!!」
「え?なんで?今度は何があったの?」
「ヌカにクギ
お笑い芸人の名前を言うと、碧は瑠璃に向き合ってぺたんと座った。
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