第5話 姉の学生生活とその他少々

 瑠璃の学校は夏休みに入ったが、みどりにとっては通学の時季がやって来た。スクーリング会場へ行く日が増え頃なのだ。今日がそんな日だった。


高校時代までは登下校のために家の外にいるのは普通の事だったが、通信制の学生となった今では、暑い中でもスクーリングに行くことが学生気分を味わうためのイベントのように感じられるようになった。


 (近所の人にどちらへお出かけ?って訊かれたら、単位のために学校へ行くんですって言えるもんね。ちゃんと勉強してるってアピールできる。でも、訊かれないんだよなあ)


 近隣住民にあったとしても挨拶くらいの言葉しか交わさないものだ。


 スクーリング会場にはバスと電車、両方とも使う。乗り物を使う辺りから、学生をやっているのだという碧の気持ちが強くなる。

 一番強くなるのは、講義を受けている時に、何気なく視線を窓へ動かした時だった。学び舎から見える窓の外側と、そこから注がれる夏の日差しはなんだか特別な気がした。


 学生たちの年齢はばらばらだった。定年後に勉強に再挑戦するために入学する人もいるし、働きながら学生をやっている現役世代の人もいる。主婦の人もいるし、碧と同世代の十代の終わりから二十代前半の人も、もちろんいた。


 碧は社会福祉について学べるコースを選んだ。精神科に入院した経験から、何だか親しみを感じたためだった。


 (家に帰ったら自分へのご褒美に冷たいサイダーか何か飲み物買って、パソコンでオータムズのMV動画観ようっと)


 その夜、碧は黒魔術に興味を持ち、瑠璃の部屋を訪れた。

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