2020/04/10 晩酌

各駅停車の中で

少し早めの晩酌がはじまる

マスクを顎まで下ろし

ビニール袋で包んだストロングゼロを

呑みながら語らうネクタイの二人

宴会とは言いがたい飲酒

金曜日なのにね

一人が言う

カレーでも食ってろってか

もう一人が言う

ソーシャルディスタンスにはほど遠いが

車内はようやく空きはじめていた

読み上げ音声の車内放送が

テレワークを推奨する

夕焼けがやたら眩しい

咳払いが聞こえて

二人は慌てて飲み干し

引っ張り上げたマスクの中から

高らかなげっぷが響いた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

2020詩集 小林素顔 @sugakobaxxoo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ