亡国内乱記
市川冬朗
第1話 初めに
始まりについて
山も死に、海も死に、愛も死ぬと歌った詩人がいる。
今の世の中溢れている物語は、始まりのお話が多く、終わりを語る物語が減った気がする。
それはそれで、平和で結構な事かもしれないが、私のような歴史学者にしてみれば、終わりが有って始めて意味があることで、少し不満を感じてもいる。
生徒諸君、始まりと終わりは、とても難しい。それはもちろん、地球の始まりを例に出すまでもなく、物理的と言ってもよい因果関係ですべてが結ばれているからに他ならない。
この授業で取り上げる、ある国の亡びる様は、今言った主題を非常に多く内包していて、それゆえに興味深い案件であると言える。
この大陸に千年前に会った帝国が、どのように亡びたか、結末は誰しもが知っている。
しかし、その始まりは、諸説入り乱れている。
最新の資料を紐解き、正確とは何かを考えたうえで正確な情報に基づき、なおかつ、地を見、物を見、そして人を見ることで緻密な理論と納得のいく想像力を発揮したまえ。
そして、現代を読み解き、自らの未来を切り開く。
その役に少しでも立つ授業であればいいと願う。
出席は任意。
但し、授業最終日のレポート発表に関しては、授業への取り組み、その真摯さを計る質問をするのでそのつもりで。
イブゥン・メル・シャリオン
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