第321話 交渉


「空爆だと⁈」


 サクラと篠宮はまたもや顔を見合わせる。


「お前の父親は何という事を思いつくのだ?」


「俺のせいじゃないですよ!」


「ぬぬぬ……」


「銃を持ってる人達を下がらせましょう。俺が話し合いに行ってきます」


 そう言うと篠宮は拡声器を通して義久よしひさにそれを要求した。


『よっくーん! 攻撃しないって約束して! 後ろの人達に銃を捨てるよう言って!』


 義久はそれを受けてうなずくと、賀蔵がぞうの部下たちに銃火器を捨てさせた。そして更に下がるように伝える。彼らは会長の顔を伺ったのちに旧校舎まで下がった。


「サクラさん、行ってきます」


「待て」


「?」


「私も行く」


 サクラが一緒に来てくれると言うので、篠宮はぱあっと顔を明るくした。


「サクラさんっ、俺の事を心配してくれるんですか⁈」


「違う! お前、どうやってシャッターを開けるつもりだ?」


「あ、そっか」


 テヘッ♪と笑う篠宮の姿にサクラは複雑な気持ちになる。本当は心配だからついて行くのだ。


 まったく、人の気も知らないで。




 サクラが一階にあるシャッター開閉のスイッチを動かすと、ゆっくりと目の前のシャッターが上がっていく。それを眺めていた篠宮は昇降口から数メートル離れた所に待ち構えている総一郎と目が合った。


「げ、親父……」


つかさっ、こちらへ戻って来い!」


「伯父さん、慌てないで下さい。つかっちゃん、落ち着いて聞いてくれ」


「何?」


「本気で行く気か?」


 義久は役職を離れて、心から彼を連れ戻したいと思っている。そして篠宮の後ろにサクラが現れたのを見て、身構えた。


 彼女を説得するのも一つの手だ。

 サクラが篠宮を説得する様に持ちかけるか——或いは二人を『方舟』からおろすか、そこはどちらでも良い。


貴女あなたからも言ってほしい。つかっちゃんはこっちに残るべきだ」




 つづく

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