第319話 ご乱心


『あー、本日は晴天なり!!』


「サクラさん、なに言ってんですか?」


「こ、これを使うときはこうするのではないのか?」


 篠宮のツッコミにサクラは慌てる。


「今どきは使わないっすね」


「鴫原校長に教わったのだ!」


 校舎の二階の窓から、篠宮とサクラの姿が現れ、サクラの手には拡声器が握られていた。


 突然の大音量に、ギョッとしてその場にいた全員が二人を見上げる。


「ああっ、ツカサァ!」


 総一郎が叫ぶ。普段の落ち着きぶりはどこへやら、きちんと撫で付けた髪が少し乱れていた。サクラはチラッと見下ろして、そのまま話し始めた。


『えー、我々は本日をもって、別次元仮称『アイランド』に移動する事とした! この校舎に近づけば、共に『ヴォイド』に落ちる可能性がある! よって接近を禁ずる!』


「馬鹿な!」


 総一郎が噛み付いた。


「そんな勝手な事はさせん! 義久よしひさ、今すぐ空爆の指示を出せ」


「はい——え?」


 空爆?


「あの、会長?」


「校舎を半分吹っ飛ばせ。そうすればあの異空間も消えるだろう?」


「いえ、そうではなくて、『空爆』とは……?」


「マツシマ基地に置いてある我が社の戦闘機にスクランブルを出すのだ。五分でここに来る」


「お、落ち着いて下さい。いくら私有地でもそれは……」


「構わん!」




 総一郎のあまりの形相に、義久は驚きつつ聞き返す。


「もしかして、会長は——司くんを取り戻したいのですか?」





 つづく

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