第295話 ユニ君も戦う



 それより少し前——。


 ユニは敵の一人に体当たりをして一緒に階段を落ちて行く。落ちながら身体をケンタウロス化させていく。


 踊り場で変身を終え、共に落ちた敵を前脚の蹄で踏み付ける。


「ぐはっ!」


 苦悶の声をあげて、男は気を失った。


 ユニは踊り場から更に二階への階段を一飛びに飛び降りると、蹄の音を鳴らして家庭科室への廊下を駆け抜けた。


 そのすぐ後に別の男達が三階に向かったのだろう。カグラ達はその部隊に屋上へ追われている。




 ユニは家庭科室の前で変身を解くと、そっと戸を開けた。


「ユニ君!」


六花ろっかちゃん!」


 良かった、無事だったのね——。


 そう言いながら、二人はぎゅっと抱き合った。


「あの、俺たちも居るんだけど」


 ウォルフの遠慮がちな言葉に、二人は顔を赤くしてぱっと離れたのだった。






 家庭科室には、サクラ、篠宮、一花と六花、それと鬼丸、レディ、白井ユキ。地下室から合流した黒羽リリとエメロード、それを助けに行ったウォルフとシュトルム。そして今来たばかりのユニ。


「カグラとカナエは——」


「屋上に出たようです」


 一花いちか生体端末カリギュラを動かして正確な位置情報を答える。サクラは頷きながら、


「カグラとカナエなら、大丈夫だろう。我々は『方舟アーク』へ向かうぞ」


 と宣言した。


 皆がそれぞれに同意を示す。一花もすぐに離れている二人へ『方舟アーク』へ向かう指示を出す。


「あっ」


 張り詰めた空気の中、篠宮が素っ頓狂な声をあげた。サクラがじろりと彼を睨む。


「なんだ、変な声をあげてどうした?」


「忘れてますよ、サクラさん!」


「何のことだ?」


「カエデさんの事です!」





 つづく

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