第291話 もう一つの想い
「リリ先輩」
地下室から出ると、まだ日が差していた。ウォルフは外に置いていた制服の上着を手に取ると、リリに渡す。
リリはそれを頭からかぶると、旧校舎の入り口に走った。その後をウォルフが追う。
「リリ先輩」
「なんだ?」
「先輩もあっちへ行きますよね?」
「当たり前だ。こんな世界にいられるか」
校舎内に入ると、リリは制服をウォルフに突き返した。
「まったく、男くさい服だな。たまにはクリーニングに出せ」
「リリ先輩」
「うるさいな、なんだ?」
「向こうへ行ったら、
「今なんて言った?」
リリはじろりとウォルフを睨む。
「……なんでもないっス」
睨まれたウォルフは肩をすくめた。あちらの世界でも時間はあるだろう、と楽観視する。
少し前を行くリリが彼に背を向けたまま言葉を放つ。
「考えておく」
小さな呟きだが、ウォルフの耳にははっきりと聞こえた。
「え、え? あの、もう一回言ってくださ——」
「うるさいッ! お前、篠宮に似て来たぞ!」
その頃、カグラとカナエにも連絡が入る。カナエは最後に持ち出す物を小さめのリュックに詰めて背負った所だった。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます