第289話 向けられた銃口
「ユキ!」
「わあん、レディ先生ー!」
廊下のかどから白井ユキが飛び出して来た。その小さな身体を受け止めながら、レディは彼女が逃げて来た方をキッと睨んだ。
しかし誰も追っては来ない。
「ユキ、大丈夫? 何があったの?」
「わあん、先生ー。武装した男の人達が入って来て、銃を向けたの」
怖かったよー、とユキは半泣きでレディに縋り付く。
「銃ですって?」
レディは眉を吊り上げながら、後から来た鬼丸に訴えかける。いくら私有地とはいえ治外法権ではあるまい。
「俺が見てくる」
鬼丸は二人を置いて、ユキが逃げて来た方へ進んで行く。
薄暗い廊下を進むと、前方に白い柱状の物が立っている。鬼丸が近づくと、氷に閉じ込められた二人の警備員であった。
ユキが
鬼丸は氷柱になった男達の武装をサッと確認すると、すぐに二人のところへ戻った。
「銃を見てきた。ライフル銃は麻酔銃だ。腰に付けている予備は電流を流す銃だな」
「実弾ではないのね。……それでもひどいわ」
「ユキが二人倒した。しばらくは回復せんだろう」
ユキに話を聞くと、侵入者は五、六人いたと言うから、一時撤退したと思われた。
「奴ら本気だな」
鬼丸の目が金色に輝いた。
一方、地下室へ向かうウォルフとシュトルム——。
「エメたん、大丈夫なんだろうな」
「…………」
兄は弟の心配には答えず、無言で階段を降りる。地下室に近づくにつれて、騒がしさが伝わって来る。
「……!」
それを耳にして兄弟は脱兎の如く走り出した。
つづく
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