第286話 新天地ってどこですか?


「新天地って、どこですか?」


 篠宮はサクラに引きずられ、そのまま旧校舎に運ばれながら聞いてみる。


「物質転送の実験の始まりは、私たち亜人デミが新しく住む場所を求めて別次元の世界を探した事が発端なのだ」


 旧校舎の中に入ると、サクラは手早く生体端末カリギュラを動かして亜人デミ全員にメッセージを送る——送りながら、篠宮の質問に答えて行く。


「——私たちはこのままアオバヤマ町に閉じ込めらて一生を終えるのか? それとも再び人体実験の材料にされるのか? 我々はそれはいなとの結論を出した」


 ——α達はまだマシだ。人間の形をしているから。ではβ達は?


 見た目からして異形の彼等は、さらにどのような扱いを受けるかわからない。


 そこで鴫原所長は変異テラヘルツ光『ヴィリ』と空間移動の為のワームホール『ヴォイド』の開発に尽力を注いだ。そして見つかった別の次元世界へ『方舟アーク』と呼ばれる建造物とともに移動する事にしたのである。


「あっ、鴫原校長は? 裏切って親父側についたじゃないですか!」


「あれは——合図なんだ」


「合図?」


 サクラが言うには、鴫原はアオバヤマ町や研究所が廃棄されたり亜人デミ達が連れ出されたりされそうになった場合、Shinomiya 側の人間として彼等をミスリードする為に動く事になっていたのだという。


「じゃあ、あれは演技ですか?」


「よく聞いていればわかったはずだ。私が校長に聞いただろう?」




 ——『鴫原校長……これはもしや……?』(決行の時ですか?)


『そうですよ、その通りです』(行きなさい)




「わかりませんよ!」


「そうか? そもそも校長があんなことをするわけなかろう」


 篠宮は父親の側にいた鴫原校長を思い浮かべる。片眼鏡が白く光って、いかにも悪役な校長——。


「うう、騙された……」




 つづく

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