第271話 お久しぶり、お二人さん
「ごめんって何よ。大丈夫よ、
慰める
「ほんとなの。私が健診に引っかかったから、あの人達が来たんだわ」
どういう事なのかと、一花はそばにいたレディを見上げる。レディもお手上げのポーズで『わからない』と返す。
一花は六花の肩に手を置いたまま、
「例の実験のせいじゃない? きっと使用電力か何か消費エネルギーの増加に目をつけられたんじゃないかしら?」
六花は再び首を振った。
「それだけじゃ浅木博士は来ないわ」
「待て待て、浅木が来ているのか?」
鬼丸は慌ててサクラからのメッセージを読み返す。時間がなかったらしく、『警戒せよ』の他にはメッセージは来ていなかった。
「俺はてっきり
「その人も来ていました」
「厄介だな。——一花、お前『
『
「まさか、今日旅立つというのではないでしょうね?」
レディが緊張感に満ちた声で聞き返す。
はたして鬼丸は静かに頷いた。
「わからん。念の為だ」
「はっ、それが無駄になる事を祈るわよ」
一花はそのレディの笑いがやけに耳についた。
「んん〜、さて、久しぶりだね、お二人さん」
浅木博士はニヤリと笑った。
篠宮はまじまじと彼を見つめてしまう。それくらい、以前見た彼と大差ない姿である。
白衣に身を包んだ痩身。白髪と赤い瞳は相変わらずだが、二十年近くの歳月がいくらか彼を白髪に見合うものに押し上げていた。
「……」
「挨拶くらいしようじゃないか。知らない仲じゃないんだしさぁ」
「何の用だ?」
サクラは押し殺した声で問う。浅木博士は鼻白んだように少しだけ顔を上げた。
博士が何か言いかけたところへ、義久が口を挟む。
「浅木博士、あなたの仕事はα体の亜人の検査でしょう? そちらはさっさと行って下さい」
「よっくん! 久しぶり〜」
「久しぶり〜じゃないわ! 今度こそ借りを返してもらうぞ」
相変わらずな篠宮に義久は思わず声を荒げてしまう。
「と、いう事は……よっくんが用があるのは?」
「この女だ」
義久はビシッと人差し指をサクラに突き付けた。
「失礼な奴だな」
サクラは鼻であしらう。それが義久の癇に障ったらしく、彼は激昂した。
「なんだと⁈ お前らがいつも面倒事を起こすんじゃないか!」
「どうどう、よっくん。落ち着いてよ」
篠宮に後ろからはがいじめにされて、義久は鼻息荒くサクラを睨んだ。
「んも〜、仲良くしてよ。——それで、サクラさんに何の用?」
「何もクソもない! 一体、何の実験をしてるんだ⁈」
つづく
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