第265話 発端はこの娘


「健診——」


 この町の亜人デミは奇数月に健康診断がある。だいぶ型式的になって来ているが、この前誰かが引っかかって再検査を受けていた。


 サクラは慌てて、生体端末カリギュラを開くと生徒達の個人情報にアクセスする。


 篠宮には見えない画面をスクロールしていくと、一人だけ再検査を受けた生徒にたどり着く。


六花ろっか?」


 何故六花が?

 今まで一度も再検査になったことはない。


 だが亜人デミの身体に異常が起きたならば、浅木博士が呼ばれた事にも説明がつく。


「六花! 今どこにいる⁈」


 サクラはそのまま生体端末カリギュラから高速通信で六花を呼ぶ。返事はすぐに来た。


『サクラ先生? 実験室に居ますけど……』


 いぶかしげな六花の声が聞こえてくる。サクラは今すぐ職員室にくるように指示を出す。


「——サクラさん、六花ちゃんが何かしたんですか?」


「……わからん。だがおそらく健診に引っかかった事が原因だと思う」


 六花が職員室に来るまでの数分も待てない程、サクラは気を揉んだ。




 つづく

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