第253話 雪合戦の行方


 ぽすっ。


 シュトルムが投げた雪玉は何かに当たり、雪の上に落ちた。


「?」


 手応えの無さに、白狼は狼狽うろたえる。


 雪煙の中に足を踏み入れると、そこに落ちていたのは篠宮が身に付けていたマフラーが一つ。嫌な予感がしながらも、雪玉を受けて雪まみれのそれを摘み上げると、背後から声がした。


「残念でした!」


「⁈」


 ——いつの間に⁈


 振り返るシュトルムの鼻先に、柔らかい雪玉が当たってはじけた。


「……やられた」


 いつの間にかシュトルムの背後にまわっていた篠宮の投げた優しげな雪玉は、見事にシュトルムを撃破した。


 雪玉の当たった鼻先に手を当てながら、シュトルムは青い瞳で篠宮を見つめる。


 この俺が鬼丸先生以外の相手に負けるとは——。


「……お前、すごいな」


「ふへへ、見直したかね?」


 シュトルムは両手を伸ばすと、篠宮を持ち上げた。


「うわ!」


 ヒョイと肩車をするとシュトルムは歩き出した。


「高い! 怖い!」


「なんだ先程の強さは間違いか?」


「そんな事はない……はず」


 篠宮は肩車されたまま、サクラを探す。サクラが来たから、勝てたのだ。


 そこへカグラ達がやって来る。


「意外じゃのう! おぬしが勝つとは思わなんだ」


「篠宮先生、すごいね!」


「いや〜、それほどでも」


 照れる篠宮。


「ところで、サクラさんが来たと思ったんだけど……どこにいるの?」


 篠宮の質問に、ウォルフが気の毒そうな顔をする。


「あー……、あっちに行ったぞ」


 サクラの行った先を指で示す。


 その先を目で辿たどった篠宮は——。


「あああ! ヤバい!」





 つづく

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