第252話 篠宮VSシュトルム


「……と、言う事は」


「残るは篠宮先生とシュトルム先輩だね〜」


 カグラとユニは再び顔を見合わせた。


「無理であろ?」


「無理だよねぇ」


 篠宮がシュトルムに勝つのは可能性が低い。現にフィールドに残された篠宮は、端の欠けたスコップを手にガタガタ震えている。


「おおお、鬼丸君! まもってくれるって、言ったじゃない⁈」


「おお、すまんな。思いのほか、教え子が成長していてな」


「ひどいーッ!」





 篠宮の叫びも虚しく、シュトルムは足元の雪を取り、ギュギュッと握る。握りながら、隠れることもせずじっと篠宮を見つめていた。


「……」


「怖い怖い怖い!」


「安心しろ、手加減する」


「ひいいい!」


 篠宮がスコップを盾にして身構えたその時、


「何をしている?」


 聞き慣れた艶のある声。


 ——サクラさん!





 瞬間、篠宮のまとう空気が変わる。


 その変化にシュトルムも狼の鼻をひくつかせた。


「ほう、意外な……しかし風上にお前がいる以上、俺の鼻は匂いで追える。逃しはせんぞ」


「ふふふ、そのかわり俺はこの技が使えるのさ!」


 見ている皆が、篠宮の変貌ぶりに呆気あっけに取られているうちに、彼はスコップを頭上に振りかざした。


「秘技・ホワイト・アウト!!」


 そう言うと篠宮は辺りの雪を巻き上げた。高速のスコップさばきで、雪は風に乗って舞い上がり、彼の姿を隠した。


「むう、姿が見えん!」


 シュトルムはそう言いつつも鼻の方で篠宮を追う。


 ——ふわり。


 篠宮の匂いだ。


「見つけたぞ!」


 シュトルムはその匂いの元へ雪玉を投げた。




 つづく

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