第250話 猛攻!黒狼と白狼!


「もらったあ!」


 ウォルフは高く宙に舞い、思い切り振りかぶって雪玉を投げつけた。


 体勢の整わない鬼丸目掛けて、渾身の一投だ。


「鬼丸君!!」


 篠宮の叫びが届いたのかどうかわからぬが、鬼丸は歯を食いしばった。


 そしてそのまま、自分の巨軀とパワーで防御壁を持ち上げる。


「えええ?」


 ウォルフの放った雪玉は鬼丸が持ち上げた防御壁に当たって砕け散る。しかも彼はそのまま防御壁を丸ごとウォルフ目掛けて投げた。


「う、わ、あああー!!」


 どでかい防御壁をまともにぶつけられ、ウォルフは雪塊と共に吹っ飛んで行く。


 さすがにやり過ぎたかと、鬼丸がウォルフの行方を目で追ったその一瞬の隙に、シュトルムが距離を詰めた。


 走りながら雪を手にし、固めた雪玉を鬼丸に向かって投げる。


「あ——!」


 パシュ!


 雪玉は鬼丸が突き出した手に当たって砕けた。どうやら鬼丸は反射的に受け止めようとしたらしい。出来立ての雪玉は、その大きな手に当たって粉々になったのだった。


「——判定? 外野からはどう見えたー?」


 篠宮に声をかけられたカグラとユニは首を捻る。


「ど、どっちかのう?」


「防御に入るかな?」


「しかし、当たったといえば当たっておる」


「えっ? じゃあ鬼丸先生の……負け?」


 おそれ多くて二人は審判ジャッジを下せない。揃ってゆっくりと鬼丸の顔を遠目に見た。




 鬼丸は雪玉が弾けた手のひらを、じっと見つめていた。離れたところからウォルフの呻き声が聞こえて来るのを聞き流し、感慨深げにシュトルムを見た。


「なかなか、やるな」





 つづく

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