第249話 人狼化


 攻撃を鬼丸に任せ、篠宮は雪玉を作ろうとする。しかし既に彼の周りにはちょうど良い雪が無かった。


「ああっ! どうしよう?」


 雪の壁から離れて雪を集めるか、隣の防御壁まで行くか——。


 迷っていると鬼丸が再び攻撃に転じた。あのボーリング球サイズの雪玉を構えている。狙いはどうやらシュトルムの隠れている方らしい。


 よし、この攻撃の隙に移動だ!


 篠宮は鬼丸の動作を見守った。


 そこへ——。


 唸りを上げて幾つもの雪玉が飛んでくる。風切り音を立てて、それらは鬼丸の防御壁を狙う。


 数での破砕。


 見る間に鬼丸のいる防御壁が弾けて崩れていく。


 鬼丸は躊躇ちゅうちょせず雪玉を投げた。ウォルフたちの攻撃を幾つか巻き込みながら、巨大雪玉はシュトルム隠れるの防御壁へ吸い込まれるようにぶつかる。


 ぶつかる寸前に防御壁から白い影が飛び出した。篠宮の目にもそれとわかるその姿は——。


「白い狼⁈」


 上半身を白い人狼の姿に変えて、シュトルムは走ったのだ。その姿に外野のカグラが歓声を上げる。


「白狼殿じゃ!!」


 素早さもパワーも格段に上がる人狼の姿になり、シュトルムは走りながら雪玉を放った。


 弾丸の如きそれは防御壁を失った鬼丸の体を狙う。


「む!」


 鬼丸は咄嗟に身体を捻り、雪玉をかわして隣の防御壁へと転がり込む。


 そこへ——。


 黒い影が跳躍した。


 黒い人狼、ウォルフだ。






 つづく

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