第248話 鬼丸ストライク



「あ〜当たっちゃった……」


 それなりの衝撃であったのか、ユニは片足跳びしながら、場外へ向かう。篠宮に「頑張って」と手を振ると、同じくアウトになったカグラの所へと行く。


「これで二対二であるな」


「カグラ君、篠宮先生も頭数に入れるの?」


彼奴あやつは何かしらやりかねんからな。それに白狼殿は鬼丸先生に勝つことに執着しすぎる」


「そこが狙い目だね〜」


 ユニはいつものようににこっと笑った。





「鬼丸君、どどど、どうすんのさ⁈ ユニ君やられちゃったよ!」


「そんなにビビる事か?」


 鬼丸はユニがやられた隙に、一つ前の雪の壁に移動していた。手招きして篠宮の作ったボーリング玉——程の大きさの雪玉を寄越せと合図した。


 作ったのは二つ。


 転がすと、鬼丸はそれを手にした。更に上から力を入れて固く握る。


「もう、凶器じゃん」


「これくらい、あいつらならけるさ」


 そう言って投げる体勢に入った。


「そおおりゃああ!!」


 素早いモーション。


 雪の防御壁から少しだけ身体を出すと同時に巨大な雪玉を投げつけた。


 思い切り——鬼丸にしたら制御しているのかもしれないが——投げられた雪玉は轟音と共に人狼兄弟の隠れている防御壁へと向かって行く。


「なんだよアレ⁈」


 ウォルフは慌てて右隣の防御壁へと飛び、シュトルムもまた左へと飛んだ。


 そこへ鬼丸の雪玉が防御壁へと当たった。


「うわぁー!」


 爆音と共に粉々に砕け散った防御壁があたりに飛び散る。篠宮は爆風にも似た雪片混じりの風を避ける為に防御壁に張り付いてやり過ごす。


 風がおさまってから、そっと覗き込むと、ウォルフたちが隠れていた防御壁は跡形も無い。


 ——なんちゅう雪合戦や。


 彼が本気で投げたら、校庭に穴が空くかもしれない。篠宮は早めにリタイアすれば良かったと後悔する。恐る恐る手を挙げつつ、切り出した。


「あの〜、俺リタ——」


 ヒュンッ!


 ドゴッと音がして篠宮の隠れている壁に穴が空いた。


「ひええっ?」


 ヤバい。


「篠宮、動くな!」


 鬼丸の制止に篠宮はこくこくと頷いて縮こまる。


 もう、鬼丸君の為に雪玉を作るしかない!





 つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る